前回写真でチェックしたLGA2011とLGA2011-v3向けのIntel純正CPUクーラーTS13Aの実力をチェックしてみようという話です。

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同じく純正クーラーのオールインワン水冷TS13Xと比較


 TS13Aは、TDP 140WまでのCPUに対応するLGA2011/LGA2011-v3向け純正CPUクーラーなわけですが、その冷却能力は本当にTDP 140WのCPUを十分に冷却し、性能を引き出せるものなのかチェックしてみましょう。

 テストの方法はシンプルで、TDP 140Wの8コア16スレッドCPU「Intel Core i7-5960X Extreme Edition」でベンチマークテストを実行し、TS13Aで冷却した場合と、より高い性能を持つCPUクーラーで冷却した場合のスコアを比較するというものです。

 テスト機材は以下の通り。

スペック

 今回、TS13Aよりも高い冷却能力を持ったCPUクーラーとして用意したのは、Intel純正のオールインワン水冷クーラー「TS13X」。120mmラジエーターを備えたAsetek製の水冷ユニットですね。TS13Xの詳細はヒートシンクグラフィックでー。

TS13A_2_04



冷却能力の違いがパフォーマンスに影響するか?


 まずは定番のCINEBENCH R15。CPU使用率が100%に達する「CPU」と、処理時間が長い「CPU (Single Core)」のスコアを比較してみました。

CINEBENCH

 結果は変わらず。Intel Core i7-5960XはTurbo Boostによる動作クロックが変動しますが、CINEBENCH R15で実行する処理程度では、TS13AでもTS13XでもTurbo Boostの挙動に影響するような差は生じなかったという結果です。


 続いて、TMPGEnc Video Mastering Works 6でのエンコードテスト。

 テストの条件はIntel Core i7-2600KでSkylakeに挑戦したときとほぼ同じで、Shadow Playで録画した1,920×1,080ドット@60fpsのゲーム動画を、1,920×1,080ドット@60fps(6Mbps)のH.265/HEVC形式に変換する時間を比較するというものですが、長時間の処理を行いたかったのでエンコード元の動画時間を7分のものに変更しています。

TMPGEnc

 17分以上の時間を要した訳ですが、それだけの処理時間でついた差は僅か1秒で、空冷のTS13Aが早いという結果。まぁこれは誤差の範疇で意味のある差とは言えないでしょう。

 最新の拡張命令セットを活用し、そのうえでCPUをほぼフルロード状態にするH.265形式へのエンコード処理でもTS13Xと同等の結果を記録できた以上、今回の環境において、TS13AはIntel Core i7-5960X Extreme Editionの性能を十分に引き出せる程度に冷やせていたと言えるでしょう。



CPU温度とファンの回転数はどのくらい?


 CPUの性能をばっちり引き出せていたTS13Aですが、動作していたCPUの温度はどの程度だったのでしょう。HWMonitor 1.28でモニタリングしたベンチマークテスト実行中のCPUコア温度(CPU Package)を並べてみました。

 なお、オマケでPrime 95 28.9のCPUストレステスト(Small FFTs)を15分実行した際の最大値も加えています。

CPU温度


 テストを行っていないアイドル時はほぼ同程度ですが、ベンチマーク中の最高CPU温度では大体10℃くらいの差がついていますね。

 TS13AがTS13Xの及ばないのは当然ですが、超高負荷のPrime 95 28.9を実行しても最大77℃程度なので、特に問題のない温度ではあるとは言えるでしょう。


 ちなみにこのテストは、MSI X99S SLI PLUSのCPUファン制御設定をデフォルトにした状態で行っており、TS13AとTS13Xはともにファンの回転数が変化しています。

 両CPUクーラーの冷却ファンがベンチマーク実行中にどこまで回転数が上がったのかをまとめたのが以下のグラフです。 

ファン回転数

 TS13AとTS13Xでは搭載する冷却ファンの形状も径もなにもかも異なるため、数字の直接比較に意味はありません。

 それでも、120mm角冷却ファンの動作音を小さく抑えられる1,000rpm台前半でまとめた水冷のTS13Xに対し、最大で3,000rpmを超えているTS13Aがうるさいのは想像に難くないでしょう。

 TS13Aの回転数と騒音の関係は、2,000rpmまでならまだ許容できますが、そこからは騒音が目立ち始め、3,000rpmを超えると相当な騒音になります。

 Prime 95は一般的なアプリケーションよりも相当に高負荷であるため仕方ありませんが、ケースのエアフローが悪いとエンコードテストなどでもそれなりの回転数を要求するようになるかもしれません。


 ちなみに、TS13Aが搭載する冷却ファンをX99S SLI PLUSのファン回転数制御機能で制御したときの回転数は以下のような感じの変化でした。今回テストしたPrime 95 Small FFTs実行中でも冷却ファンは最大回転数には達しておらず、まだ余力はあるようです。

 なお、LGA1151対応CPUに付属する純正CPUクーラーに搭載されているサーミスタ制御は、TS13Aには搭載されていません。

TS13A-ファン

CMD-TS13A
ファンの制御をに利用したMSI COMMAND CENTER




最低限の冷却性能を確保したIntel純正という安心感


 TS13AはIntel純正という言葉に対する安心感を得るためのCPUクーラーです。TDP 140WのCPUを十分に冷却できる性能を確実に持っているところがポイントです。

 TS13Aの冷却能力はファンの回転数に頼っている部分が結構あるので、静かにしたいという人には向かないでしょう。それなら同じ純正で水冷のTS13Xの方が適しています。

 3,000円ちょい出して買うに値するだけの冷却能力を持っている製品だとは思えませんが、4か所ねじ止めするだけで簡単に取り付けられる点は、メモリやら、マザーボードやら、LGA2011系のマザーボードでいろいろ実験する人には便利かもしれませんね。