AMDアンバサダーコンテスト

 それは、A10-7800を頂戴する代わりに、それを用いた自作PCを製作。その製作の過程や実際の使用感などを記事としてまとめることで、「自作PCの面白さを伝えるとともに、AMD製品への理解を促進する」という目的を達成するコンテストである。

 AMDよりご招待いただいた当初は、「これ、長らくブログを放置している私が参加してもいいのか?」とも思ったものの、据え膳くわぬはなんとやらということで、ご招待をお受けした次第でございます。

 AMDアンバサダーコンテスト参加記事の第1回となる今回は、A10-7800がどんな製品なのかという紹介から、製作するPCのパーツセレクトまでの内容となっております。

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AMDのAPU『A10-7800』、そのメリットとは?


 さて、今回はA10-7800でPCを作るというのが目的な訳なのですが、その前にA10-7800とはどういう製品なのか、そもそもAMDの言うAPUとは何なのかを確認しておきましょう。

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 AMDのAPUを簡単に説明すると、従来のCPUに、主に3Dグラフィックスの描画を司る GPU を統合したプロセッサです。CPUにGPUを統合するという設計は、Intelのメインストリーム向けプラットフォームLGA 1150でも採用されている手法なのですが、AMDのAPUは、IntelのCPUに比べ、GPU性能に重きを置いた設計を採用しています。

 AMDがGPU性能を重視してAPUを設計している理由は、単にGPUの3D性能を重視してのことではなく、GPUの高い並列演算能力を3D描画以外の演算に用いるGPGPU用途を想定しているためです。これまでCPUが担当してきた処理の中には、GPUの方が得意とする演算も含まれていました。そうした処理をGPU側で処理することでパフォーマンスを高めようというのが、現在のAMDの設計思想です。現在は、OpenCLやHSA(Heterogeneous System Architecture)という枠組みで、GPUを汎用演算で利用する環境の整備が進んでいます。

 ……と、脱線気味にAPUについて説明しましたが、AMD APUを選ぶ上でのメリットは、そこそこのパフォーマンスを持ったCPUとGPUを安価に入手できる点にあると、個人的には考えています。現時点で活用できるシーンの限られているOpenCLやHSAは、オマケ程度に考えていても良いでしょう。

 今回AMDより頂戴したA10-7800は、開発コードネーム Kaveri こと、第4世代AMD Aシリーズ APUをベースにした製品で、4つのCPUコアと、512基のStreaming Processorを備えたGPUコア「Radeon R7」を備えています。熱設計電力(TDP)は65Wなのですが、Kaveri世代のAPUでサポートされたTDP調整機能の Configurable TDP に対応しており、同機能を利用したTDP 45W相当での動作に最適化されています。

 このAPUを購入する上でポイントと言えるのは、4つのCPUコアと、単体ビデオカードとして販売されているRadeon R7 250を超えるスペックのGPUコアを備えているというところです。これだけのスペックがあれば、一般的にPCで行う処理のほとんどをそつなくこなせます。

 何をやってもそつなくこなせるだけのCPUとGPUを備えている。これが、A10-7800の魅力であると言えます。

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A10-7800で作るPCのコンセプトは?


 さて、ではA10-7800を使ったPCを自作するという本題の方へ入っていきましょう。

 A10-7800については、先に長々と述べたとおり、何でもそつなくこなせるだけのCPUとGPUを備えていることが魅力です。この魅力を生かして作るPCとはどのようなものなのかと考えた時、私が思いつくのは「10万円前後で作るオールラウンダーなPC」です。

 ……というと、なんだかフワッとしたコンセプトですが、A10-7800は「そこそこの予算で、そこそこ使えるPC」を作るのに、A10-7800はちょうど良い製品なのです。このコンセプトをベースに、コンパクトなPCに仕上げても良いし、あえて拡張性を重視したATXマシンを構築しても良いでしょう。

 APUで作るPCは、漠然と快適に使えるPCが欲しいと考えている方にお勧めです。動画のエンコードを速くしたい、高解像度かつ高画質な設定でゲームを楽しみたいと言ったように、PCを利用するにあたって明確な目的がある場合は、APUで自作をするより、もう少しコストをかけて高性能なCPUやビデオカードを購入されることをお勧めします。

 何をやってもそつなくこなせるというAPUの魅力は、ある程度コストを抑えてこそ、いきてくる魅力なのです。次項では、このことを念頭に置いてセレクトしたPCパーツを紹介して参ります。



今回自作するPCのパーツ紹介


 今回、A10-7800搭載PCの構成を考えるにあたり、最初に決めたのはPCケースです。

 選んだPCケースは、IN WINの「IW-CE685/300P」。Micro ATXフォームファクター対応のスリムデスクトップ型ケースで、80PLUS PLATINUM認証を取得した300W電源を標準搭載しています。これで12,500円ほどというお値段ですから、なかなかお買い得なPCケースです。

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 ケースを決めたら次はマザーボード。ケースがMicro ATX対応なので、今回はASUSのAMD A88Xチップセット搭載マザーボード「A88XM-PLUS」をチョイスしました。

 コスト重視で安っぽい作りの製品が多いA88Xチップセット搭載製品の中でも、A88XM-PLUSは、6フェーズの電源回路を採用。さらに、冷却用ヒートシンクを搭載するなど、比較的しっかりした作りが魅力の製品です。惜しむらくは、ディスプレイ出力用の端子がHDMI、DVI-D、D-Subの3系統のみで、DisplayPortに対応していないところですね。

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 CPUクーラーには、REEVENの「STEROPES」を選びました。

 PCケースがスリムデスクトップということもあり、搭載可能なCPUクーラーの高さに制限があるため、全高60mmというローハイト設計を買ってのチョイスです。120mmファン付きで4,000円弱と安価であることも、今回選んだ理由の一つです。

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 メモリは別件で買ったTeamのDDR3-2133メモリ「TZRD38G2133HC11ADC01」を流用してみました。

 A10-7800のメモリコントローラがサポートする最大メモリクロック、DDR3-2133での動作に対応した4GBメモリ2枚組で、タイミングは11-11-11-31、動作電圧は1.65Vとなっています。搭載しているヒートスプレッダの高さが低いため、CPUクーラーなどと干渉するリスクがほぼ無いことも魅力です。

 ちなみに、APUが備えるGPUのパフォーマンスは、メモリの動作クロックに大きく左右されるため、A10クラスのAPUには、DDR3-2133以上のメモリを組み合わせるのがおすすめです。

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 システム用のストレージには、トランセンドの「TS512GSSD370」を採用。容量512GBのSATA 6Gbps対応SSDです。

 トランセンドのSSD370シリーズは、CrucialのMX100シリーズと並んで安価なSSDの一つ。512GBという大容量SSDでありながら、今回購入した際の価格は22,000円程度だったので、1GBあたりの価格は50円を切っていることになります。SSDもずいぶん安くなったものですね。

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 光学ドライブには、PioneerのBDドライブ「BDR-209JBK」をチョイス。

 安価なBDドライブよりも静粛性に優れていたりするPioneerのパッケージ版BDドライブ。まぁ、ここはPioneerブランドが一番の決め手になっている感があります。別にもっと安いBDドライブでもいいとは思いますが、Frontベゼルに Pioneer って入ってた方がカッコいいじゃん!という変なこだわりで選んでいます。

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パーツセレクト編 まとめ 〜 合計金額(想定)は約103,000円


 今回使用するパーツをまとめると、以下の表のようになります。

 各パーツの金額については、基本的に筆者が購入した金額(一部端数を省略)を表記しています。なお、A10-7800については、AMDの市場想定価格(税抜き16,980円)を元に算出しています。

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 今回のパーツ構成では、合計金額が10万円を若干超えてしまっていますが、光学ドライブやSSDの容量を1グレード落とせば、OS込みでも10万円以内に収めることが可能です。もし、予算に余裕があるなら、メインメモリを16GBにして、メモリ容量にゆとりを持たせてみるのも良いでしょう。



 さて、次回は組立編。本日の夜にはアップ……する予定です。

※追記:組立編を公開しました