「動作クロックが3.0GHz」「CPU倍率の上方変更が可能」という共通点を持つCPUという事で、『Phenom II X4 940 Black Edition』と、『Core 2 Extreme QX9650』のパフォーマンス比較を行ってみました。

今回、『Phenom II X4 940 Black Edition』と『Core 2 Extreme QX9650』を比較するにあたり、AMD側は「790GX+SB750」搭載のDFI製マザー『LANPARTY JR 790GX-M2RS』、Intel側は「GeForce 9400」搭載のGigabyte製マザー『GA-E7AUM-DS2H』を用意して検証を行いました。
検証環境のパーツ構成は以下の通りとなっています。

今回は「Sandra 2009 (15.72)」や「CrystalMark 2004R3」などのCPU性能を計測するベンチマークソフトの他、「Super PI」や「Windows Media Encoder 9」を使ってCPUのパフォーマンスを比較してみました。
まずはSiSoftware の「Sandra 2009 (15.72)」のCPU系ベンチマーク結果のグラフからです。「Sandra 2009 (15.72)」では、整数演算能力と浮動小数点能力を測定する「Processor Arithmetic」と、SSEを使った図形描画性能(マンデルブロ図形)を測定する「Processor Multi-Media」の二つで比較を行いました。


比較結果では、全5項目中『Phenom II X4 940 Black Edition』が優勢なのは「Processor Multi-Media」のInt x8のみで、残り4項目については『Core 2 Extreme QX9650』が結構な差をつけて『Phenom II X4 940 Black Edition』を上回るスコアを記録しています。
続いて、「CrystalMark 2004R3」のALUとFPUのスコアを紹介します。

「CrystalMark 2004R3」でのスコア傾向は、「Sandra 2009 (15.72)」の「Processor Arithmetic」とよく似ており、ALU・FPUとも『Core 2 Extreme QX9650』が『Phenom II X4 940 Black Edition』より15%前後程度高いスコアを記録しています。
次は「Super PI Mod 1.5 XS」の104万桁(1M)と416万桁(4M)の処理時間の比較グラフです。

「Super PI」は「Intel Core 2 Processor」が得意とするベンチマークソフトであり、以前行った『Phenom II X4 940 Black Edition』のプチ検証で大方わかっていた事ですが、104万桁(1M)で7〜8秒、416万桁では約40秒もの差をつけて、『Core 2 Extreme QX9650』が『Phenom II X4 940 Black Edition』を圧倒しています。
続いてのグラフは、MAXONが同社製3DCGソフトウェア「Cinema 4D」をベースにして開発した、3Dレンダリング系ベンチマークソフト「CINEBENCH R10」での比較結果です。

「CINEBENCH R10」でもこれまで紹介したベンチマーク結果と同様に、『Core 2 Extreme QX9650』が優位な結果となっています。『Phenom II X4 940 Black Edition』に関しては、4コア利用時のスコアが1コア利用時に比べ約3.63倍と、『Core 2 Extreme QX9650』の約3.49倍と比較して高い性能向上率を実現しているものの、シングルコア単体の性能で大幅にリードされている為、『Core 2 Extreme QX9650』のスコアには追い付けていません。
CPU性能比較ベンチマークの最後に、「Windows Media Encoder 9」を使って約1分のフルHD動画(この動画の元データ)をエンコードするのに掛った時間を比較してみました。

「Windows Media Encoder 9」では、最高負荷設定の5201Kbps設定こそ5〜8秒の差をつけられてしまっていますが、『Radeon HD 4870 X2』を搭載した際のスコアは、764Kbps設定や2201Kbps設定で『Core 2 Extreme QX9650』と互角以上のタイムを記録しており、明らかに押され気味だったこれまでのベンチマーク結果とは異なる傾向を示しています。
最後に紹介した「Windows Media Encoder 9」で『Phenom II X4 940 Black Edition』がかなり善戦してはいたものの、CPU性能を計測するベンチマークソフトではほとんどの場合『Core 2 Extreme QX9650』の後塵を拝する結果になっており、同一クロックにおけるCPUパフォーマンス≒クロック当たりのパフォーマンスに関しては「Phenom II」よりも「Core 2」が優秀である事は間違いなさそうです。
「CINEBENCH R10」でマルチコア利用時の性能向上率で、共有L3キャッシュを搭載したネイティブクアッドコアCPUとしての優位性は示したものの、同時にシングルスレッドの処理能力で「Core 2」に大きくリードされている事を露呈しており、「Phenom II X4」が「Core 2 Quad」を超える為にはシングルスレッド性能のさらなる向上を図る必要がありそうですね。
CPUパフォーマンスの比較に続いて、CPU内部に搭載されている内蔵キャッシュとメインメモリへのアクセス性能を比較してみました。
まずは、「Sandra 2009 (15.72)」の「Memory Bandwidth」と、「CrystalMark 2004R3」を使ってメインメモリへのアクセス速度を計測してみました。


結果は御覧の通りで、同じDDR2-800(CL5)をデュアルチャンネルで搭載した環境とは思えないほどの大差をつけて『Phenom II X4 940 Black Edition』が『Core 2 Extreme QX9650』を圧倒しています。
チップセット側にメモリコントローラを搭載し、FSBバス経由でメモリにアクセスする『Core 2 Extreme QX9650』に対し、CPU内部にメモリコントローラを内蔵している『Phenom II X4 940 Black Edition』が、メモリコントローラ内蔵CPUとしての優位性を見せつけた結果と言えますね。
続いては、CPU内蔵キャッシュの性能を「Sandra 2009 (15.72)」の「Cache and Memory」と「Memory Latency」を使って比較してみました。



まずCPU内蔵キャッシュとメインメモリへのアクセス速度を計測する「Cache and Memory」の結果を中心にみていくと、以下の事が言えます。
・データ用L1キャッシュは『Core 2 Extreme QX9650』の方が高速
・L2キャッシュは『Phenom II X4 940 Black Edition』の方が高速
・『Core 2 Extreme QX9650』のL2キャッシュと『Phenom II X4 940 Black Edition』のL3キャッシュでは、『Core 2 Extreme QX9650』のL2キャッシュの方が高速。
グラフを解説すると以下のような感じです。
各コア毎に32KB(=計128KB)のデータ用L1キャッシュを有する『Core 2 Extreme QX9650』が、"ブロックサイズ 128KB"までは優位を保っています。これに対し『Phenom II X4 940 Black Edition』は各コア毎に64KBのデータ用L1キャッシュ(=計256KB)を有しているため、"ブロックサイズ 256KB"で『Core 2 Extreme QX9650』を逆転しています。(256KB時点で『Core 2 Extreme QX9650』はL2キャッシュを利用中)
各コア毎に512KB(=計2MB)のL2キャッシュを有する『Phenom II X4 940 Black Edition』と、各ダイに6MB(=計12MB)の共有L2キャッシュを有する『Core 2 Extreme QX9650』お互いがL2キャッシュを利用している"ブロックサイズ 512KB〜1MB"のスコアを比較すると、『Phenom II X4 940 Black Edition』が『Core 2 Extreme QX9650』を上回っています。よって、L2対L2では『Phenom II X4 940 Black Edition』が高速であると言えます。
"ブロックサイズ 4MB"では、『Phenom II X4 940 Black Edition』がL3キャッシュを利用中で、『Core 2 Extreme QX9650』がL2キャッシュを利用しています。この時のアクセス速度はL2キャッシュを利用している『Core 2 Extreme QX9650』の方が高くなっています。よって、『Core 2 Extreme QX9650』のL2キャッシュ対『Phenom II X4 940 Black Edition』のL3キャッシュでは、『Core 2 Extreme QX9650』のL2キャッシュの方が高速であると言えます。
この結果は「Memory Latency」の結果にも表れており、L2キャッシュが16〜18 Clockとなっているのに対し、『Phenom II X4 940 Black Edition』のL3キャッシュは70〜73 Clockとなっています。
内蔵キャッシュ容量やアクセス速度を鑑みると、内蔵キャッシュ内に収まっている内は『Core 2 Extreme QX9650』、メインメモリにアクセスするようになると『Phenom II X4 940 Black Edition』がアクセス速度的に有利という事になりますね。
パフォーマンス比較の最後に3Dゲーム系ベンチマークソフトでの性能比較を行ってみました。一応IGP利用時のスコアも記載してありますが、今回のベンチマークの趣旨はCPUの性能比較なので、『Radeon HD 4870 X2』搭載時のベンチマークスコアを中心に比較を行っていきます。
まずは定番のFuturemark「3DMark series」の結果からです。




今回ベンチマーク比較を行った「3DMark シリーズ」のうち、『Phenom II X4 940 Black Edition』搭載環境の方が高いスコアを記録したのは「3DMark05」「3DMark06」の2本のみで、最新の「3DMark Vantage (Entry/Performance)」をはじめ「3DMark 2001」「3DMark03」は『Core 2 Extreme QX9650』搭載環境の方が高いスコアを記録しています。
ただ、『Phenom II X4 940 Black Edition』搭載環境が優勢な「3DMark06」のスコアに関しては、CPUスコアが劣っているにも関わらず総合スコアが高く、3DMark VantageではCPUスコアが明らかに低いにも関わらずGPUスコアが『Core 2 Extreme QX9650』搭載環境を上回っているなど、ちょっと不思議なスコアになっています。
これに関しては、『Phenom II X4 940 Black Edition』搭載環境が、CPU・チップセット・ビデオカードをAMD製品で固めた「Dragon プラットフォーム」で構築されているのに対し、『Core 2 Extreme QX9650』搭載環境は、CPUがIntel、チップセットがNVIDIA、ビデオカードがAMDという呉越同舟な構成なので、ビデオカードのパフォーマンスが十分に発揮されていない可能性がありますね。
続いて、「LOST PLANET Extreme Condition」「Devil May Cry 4」「Call of Jaarez DX10 Benchmark」「FINAL FANTASY XI Official Benchmark Program 3」「はとぅねベンチ」のスコアを一気に紹介します。





CPUパフォーマンス比較では『Core 2 Extreme QX9650』が優勢でしたが、3Dゲーム系ベンチマークでは「Dragon プラットフォーム」の力もあってか、『Phenom II X4 940 Black Edition』がかなり善戦しており、「LOST PLANET Extreme Condition」、「Devil May Cry 4 (DirectX 9)」で優勢、「Call of Juarez DX10 Benchmark」ではほぼ互角のスコアを記録しています。
ただ、「はとぅねベンチ」に関しては『Core 2 Extreme QX9650』搭載環境に完敗を喫しています。「はとぅねベンチ」はCPU依存度の低いベンチマークソフトですが、『Radeon HD 4870 X2』で解像度を800×600程に抑えると流石にCPU性能がボトルネックになっており、シングルスレッドアプリケーションである「はとぅねベンチ」では、シングルスレッド性能に優れる『Core 2 Extreme QX9650』には及ばないようですね。
比較検証の最後は毎回恒例の消費電力比較です。測定方法はいつもの通りディスプレイを除くシステム全体の消費電力比較(電源ユニットが消費する電力をワットチェッカーで測定)するというもので、今回はCPU中心の消費電力比較なので、「Stress Prime 2004」で負荷をかけるコア数を調整しながら、利用コア数毎の消費電力も測定してみました。



消費電力比較の結果は、総じて『Phenom II X4 940 Black Edition』搭載環境が『Core 2 Extreme QX9650』搭載環境より消費電力が高いという結果になっています。
利用コア数毎の消費電力比較をみてみると、利用コア数あたりの消費電力でも『Phenom II X4 940 Black Edition』の方が高くなっていますが、これに関しては、ロード状態のコア以外はクロックが引き下げる省電力技術「Cool'n'Quiet 3.0」の効果により、アイドル状態のコアが消費する電力が抑制されている為であるという見方も出来ます。
いずれにせよ、『Core 2 Extreme QX9650』よりも『Phenom II X4 940 Black Edition』の方が多くの電力を消費するというのは間違いなさそうです。
一通り検証してみた感じでは、『Phenom II X4 940 Black Edition』では『Core 2 Extreme QX9650』にはまだ及ばないという印象を感じました。シングルスレッド性能やクロック当たりの性能で及ばず、消費電力も競合製品より高いという『Phenom II X4 940 Black Edition』をみると、かつてK8がNetBurstに対して持っていた優位性をAMDがまだ取り戻せていないというのはちょっと残念です。
それでも、初代Phenomと比べればコストパフォーマンス的には「Core 2 Quad」対抗製品となり得るだけの価値が「Phenom II X4」にはあると言えます。既にIntelの「Core 2 Quad」に対応出来るPCを持っているのであれば乗り換える程のものではありませんが、新規にPCを作成する場合や既存の環境からのアップグレードには十分選ぶ価値のある製品であると思います。
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・Phenom II X4 940 Black Edition
・Core 2 Extreme QX9650
・Core 2 Quad Q9650

◆ 検証環境 〜両陣営最速のIGP搭載マザーで比較〜 |
今回、『Phenom II X4 940 Black Edition』と『Core 2 Extreme QX9650』を比較するにあたり、AMD側は「790GX+SB750」搭載のDFI製マザー『LANPARTY JR 790GX-M2RS』、Intel側は「GeForce 9400」搭載のGigabyte製マザー『GA-E7AUM-DS2H』を用意して検証を行いました。
検証環境のパーツ構成は以下の通りとなっています。

◆ CPUパフォーマンスを比較 |
今回は「Sandra 2009 (15.72)」や「CrystalMark 2004R3」などのCPU性能を計測するベンチマークソフトの他、「Super PI」や「Windows Media Encoder 9」を使ってCPUのパフォーマンスを比較してみました。
まずはSiSoftware の「Sandra 2009 (15.72)」のCPU系ベンチマーク結果のグラフからです。「Sandra 2009 (15.72)」では、整数演算能力と浮動小数点能力を測定する「Processor Arithmetic」と、SSEを使った図形描画性能(マンデルブロ図形)を測定する「Processor Multi-Media」の二つで比較を行いました。


比較結果では、全5項目中『Phenom II X4 940 Black Edition』が優勢なのは「Processor Multi-Media」のInt x8のみで、残り4項目については『Core 2 Extreme QX9650』が結構な差をつけて『Phenom II X4 940 Black Edition』を上回るスコアを記録しています。
続いて、「CrystalMark 2004R3」のALUとFPUのスコアを紹介します。

「CrystalMark 2004R3」でのスコア傾向は、「Sandra 2009 (15.72)」の「Processor Arithmetic」とよく似ており、ALU・FPUとも『Core 2 Extreme QX9650』が『Phenom II X4 940 Black Edition』より15%前後程度高いスコアを記録しています。
次は「Super PI Mod 1.5 XS」の104万桁(1M)と416万桁(4M)の処理時間の比較グラフです。

「Super PI」は「Intel Core 2 Processor」が得意とするベンチマークソフトであり、以前行った『Phenom II X4 940 Black Edition』のプチ検証で大方わかっていた事ですが、104万桁(1M)で7〜8秒、416万桁では約40秒もの差をつけて、『Core 2 Extreme QX9650』が『Phenom II X4 940 Black Edition』を圧倒しています。
続いてのグラフは、MAXONが同社製3DCGソフトウェア「Cinema 4D」をベースにして開発した、3Dレンダリング系ベンチマークソフト「CINEBENCH R10」での比較結果です。

「CINEBENCH R10」でもこれまで紹介したベンチマーク結果と同様に、『Core 2 Extreme QX9650』が優位な結果となっています。『Phenom II X4 940 Black Edition』に関しては、4コア利用時のスコアが1コア利用時に比べ約3.63倍と、『Core 2 Extreme QX9650』の約3.49倍と比較して高い性能向上率を実現しているものの、シングルコア単体の性能で大幅にリードされている為、『Core 2 Extreme QX9650』のスコアには追い付けていません。
CPU性能比較ベンチマークの最後に、「Windows Media Encoder 9」を使って約1分のフルHD動画(この動画の元データ)をエンコードするのに掛った時間を比較してみました。

「Windows Media Encoder 9」では、最高負荷設定の5201Kbps設定こそ5〜8秒の差をつけられてしまっていますが、『Radeon HD 4870 X2』を搭載した際のスコアは、764Kbps設定や2201Kbps設定で『Core 2 Extreme QX9650』と互角以上のタイムを記録しており、明らかに押され気味だったこれまでのベンチマーク結果とは異なる傾向を示しています。
最後に紹介した「Windows Media Encoder 9」で『Phenom II X4 940 Black Edition』がかなり善戦してはいたものの、CPU性能を計測するベンチマークソフトではほとんどの場合『Core 2 Extreme QX9650』の後塵を拝する結果になっており、同一クロックにおけるCPUパフォーマンス≒クロック当たりのパフォーマンスに関しては「Phenom II」よりも「Core 2」が優秀である事は間違いなさそうです。
「CINEBENCH R10」でマルチコア利用時の性能向上率で、共有L3キャッシュを搭載したネイティブクアッドコアCPUとしての優位性は示したものの、同時にシングルスレッドの処理能力で「Core 2」に大きくリードされている事を露呈しており、「Phenom II X4」が「Core 2 Quad」を超える為にはシングルスレッド性能のさらなる向上を図る必要がありそうですね。
◆ メモリアクセスとキャッシュ性能を比較 |
CPUパフォーマンスの比較に続いて、CPU内部に搭載されている内蔵キャッシュとメインメモリへのアクセス性能を比較してみました。
まずは、「Sandra 2009 (15.72)」の「Memory Bandwidth」と、「CrystalMark 2004R3」を使ってメインメモリへのアクセス速度を計測してみました。


結果は御覧の通りで、同じDDR2-800(CL5)をデュアルチャンネルで搭載した環境とは思えないほどの大差をつけて『Phenom II X4 940 Black Edition』が『Core 2 Extreme QX9650』を圧倒しています。
チップセット側にメモリコントローラを搭載し、FSBバス経由でメモリにアクセスする『Core 2 Extreme QX9650』に対し、CPU内部にメモリコントローラを内蔵している『Phenom II X4 940 Black Edition』が、メモリコントローラ内蔵CPUとしての優位性を見せつけた結果と言えますね。
続いては、CPU内蔵キャッシュの性能を「Sandra 2009 (15.72)」の「Cache and Memory」と「Memory Latency」を使って比較してみました。



まずCPU内蔵キャッシュとメインメモリへのアクセス速度を計測する「Cache and Memory」の結果を中心にみていくと、以下の事が言えます。
・データ用L1キャッシュは『Core 2 Extreme QX9650』の方が高速
・L2キャッシュは『Phenom II X4 940 Black Edition』の方が高速
・『Core 2 Extreme QX9650』のL2キャッシュと『Phenom II X4 940 Black Edition』のL3キャッシュでは、『Core 2 Extreme QX9650』のL2キャッシュの方が高速。
グラフを解説すると以下のような感じです。
各コア毎に32KB(=計128KB)のデータ用L1キャッシュを有する『Core 2 Extreme QX9650』が、"ブロックサイズ 128KB"までは優位を保っています。これに対し『Phenom II X4 940 Black Edition』は各コア毎に64KBのデータ用L1キャッシュ(=計256KB)を有しているため、"ブロックサイズ 256KB"で『Core 2 Extreme QX9650』を逆転しています。(256KB時点で『Core 2 Extreme QX9650』はL2キャッシュを利用中)
各コア毎に512KB(=計2MB)のL2キャッシュを有する『Phenom II X4 940 Black Edition』と、各ダイに6MB(=計12MB)の共有L2キャッシュを有する『Core 2 Extreme QX9650』お互いがL2キャッシュを利用している"ブロックサイズ 512KB〜1MB"のスコアを比較すると、『Phenom II X4 940 Black Edition』が『Core 2 Extreme QX9650』を上回っています。よって、L2対L2では『Phenom II X4 940 Black Edition』が高速であると言えます。
"ブロックサイズ 4MB"では、『Phenom II X4 940 Black Edition』がL3キャッシュを利用中で、『Core 2 Extreme QX9650』がL2キャッシュを利用しています。この時のアクセス速度はL2キャッシュを利用している『Core 2 Extreme QX9650』の方が高くなっています。よって、『Core 2 Extreme QX9650』のL2キャッシュ対『Phenom II X4 940 Black Edition』のL3キャッシュでは、『Core 2 Extreme QX9650』のL2キャッシュの方が高速であると言えます。
この結果は「Memory Latency」の結果にも表れており、L2キャッシュが16〜18 Clockとなっているのに対し、『Phenom II X4 940 Black Edition』のL3キャッシュは70〜73 Clockとなっています。
内蔵キャッシュ容量やアクセス速度を鑑みると、内蔵キャッシュ内に収まっている内は『Core 2 Extreme QX9650』、メインメモリにアクセスするようになると『Phenom II X4 940 Black Edition』がアクセス速度的に有利という事になりますね。
◆ 3Dゲーム系ベンチマークソフトでの性能比較 |
パフォーマンス比較の最後に3Dゲーム系ベンチマークソフトでの性能比較を行ってみました。一応IGP利用時のスコアも記載してありますが、今回のベンチマークの趣旨はCPUの性能比較なので、『Radeon HD 4870 X2』搭載時のベンチマークスコアを中心に比較を行っていきます。
まずは定番のFuturemark「3DMark series」の結果からです。




今回ベンチマーク比較を行った「3DMark シリーズ」のうち、『Phenom II X4 940 Black Edition』搭載環境の方が高いスコアを記録したのは「3DMark05」「3DMark06」の2本のみで、最新の「3DMark Vantage (Entry/Performance)」をはじめ「3DMark 2001」「3DMark03」は『Core 2 Extreme QX9650』搭載環境の方が高いスコアを記録しています。
ただ、『Phenom II X4 940 Black Edition』搭載環境が優勢な「3DMark06」のスコアに関しては、CPUスコアが劣っているにも関わらず総合スコアが高く、3DMark VantageではCPUスコアが明らかに低いにも関わらずGPUスコアが『Core 2 Extreme QX9650』搭載環境を上回っているなど、ちょっと不思議なスコアになっています。
これに関しては、『Phenom II X4 940 Black Edition』搭載環境が、CPU・チップセット・ビデオカードをAMD製品で固めた「Dragon プラットフォーム」で構築されているのに対し、『Core 2 Extreme QX9650』搭載環境は、CPUがIntel、チップセットがNVIDIA、ビデオカードがAMDという呉越同舟な構成なので、ビデオカードのパフォーマンスが十分に発揮されていない可能性がありますね。
続いて、「LOST PLANET Extreme Condition」「Devil May Cry 4」「Call of Jaarez DX10 Benchmark」「FINAL FANTASY XI Official Benchmark Program 3」「はとぅねベンチ」のスコアを一気に紹介します。





CPUパフォーマンス比較では『Core 2 Extreme QX9650』が優勢でしたが、3Dゲーム系ベンチマークでは「Dragon プラットフォーム」の力もあってか、『Phenom II X4 940 Black Edition』がかなり善戦しており、「LOST PLANET Extreme Condition」、「Devil May Cry 4 (DirectX 9)」で優勢、「Call of Juarez DX10 Benchmark」ではほぼ互角のスコアを記録しています。
ただ、「はとぅねベンチ」に関しては『Core 2 Extreme QX9650』搭載環境に完敗を喫しています。「はとぅねベンチ」はCPU依存度の低いベンチマークソフトですが、『Radeon HD 4870 X2』で解像度を800×600程に抑えると流石にCPU性能がボトルネックになっており、シングルスレッドアプリケーションである「はとぅねベンチ」では、シングルスレッド性能に優れる『Core 2 Extreme QX9650』には及ばないようですね。
◆ 各CPUの省電力性を検証 〜 システム全体の消費電力比較 〜 |
比較検証の最後は毎回恒例の消費電力比較です。測定方法はいつもの通りディスプレイを除くシステム全体の消費電力比較(電源ユニットが消費する電力をワットチェッカーで測定)するというもので、今回はCPU中心の消費電力比較なので、「Stress Prime 2004」で負荷をかけるコア数を調整しながら、利用コア数毎の消費電力も測定してみました。



消費電力比較の結果は、総じて『Phenom II X4 940 Black Edition』搭載環境が『Core 2 Extreme QX9650』搭載環境より消費電力が高いという結果になっています。
利用コア数毎の消費電力比較をみてみると、利用コア数あたりの消費電力でも『Phenom II X4 940 Black Edition』の方が高くなっていますが、これに関しては、ロード状態のコア以外はクロックが引き下げる省電力技術「Cool'n'Quiet 3.0」の効果により、アイドル状態のコアが消費する電力が抑制されている為であるという見方も出来ます。
いずれにせよ、『Core 2 Extreme QX9650』よりも『Phenom II X4 940 Black Edition』の方が多くの電力を消費するというのは間違いなさそうです。
◆ シングルスレッド性能や消費電力では「Core 2」に及ばず… |
一通り検証してみた感じでは、『Phenom II X4 940 Black Edition』では『Core 2 Extreme QX9650』にはまだ及ばないという印象を感じました。シングルスレッド性能やクロック当たりの性能で及ばず、消費電力も競合製品より高いという『Phenom II X4 940 Black Edition』をみると、かつてK8がNetBurstに対して持っていた優位性をAMDがまだ取り戻せていないというのはちょっと残念です。
それでも、初代Phenomと比べればコストパフォーマンス的には「Core 2 Quad」対抗製品となり得るだけの価値が「Phenom II X4」にはあると言えます。既にIntelの「Core 2 Quad」に対応出来るPCを持っているのであれば乗り換える程のものではありませんが、新規にPCを作成する場合や既存の環境からのアップグレードには十分選ぶ価値のある製品であると思います。
最安値情報(coneco.net) & Shop Link
・Phenom II X4 940 Black Edition
・Core 2 Extreme QX9650
・Core 2 Quad Q9650
コメント
コメント一覧 (14)
システム全体の消費電力のグラフの一番上の奴ですが、9650+4870X2表記が抜けてる様です
ただ、i7のせいで微妙なことになっていますが・・・・
がんばれ、AMD!
ちなみに、QX9650は今のQ9650なんだし、そんなに価格差もないしな。
例えば、ハイエンドを購入する為には、値段なんかで比較するより両者の最高性能同士で比較する場合だってあるんだし、
比較する条件は複数あっても良いと思うよ。
消費電力の結果はこれまでに検証された国内、海外サイトの結果と比べるとちょっと違いすぎるかなと。
CPUの個体差なのかマザーなどの環境の違いなのか。
どうせならE8400、X2 6000+、Opteron 156、PenD930、Pen4 631とかあったら時代を感じつつ楽しかったかも。
ご指摘ありがとうございます。修正させて頂きました。
>>通りすがり さん
>>名無しさん さん
3.0GHzで上方倍率可変CPUの比較と言いつつ、内容としてはどちらも定格動作となっておりますので、費用対効果を考慮に入れるのであれば、『Core 2 Extreme QX9650』と同クロックの『Core 2 Quad Q9650』を想定したパフォーマンス検証と思っていただければ良いかと思われます。(TDPはQ9650の方が低いですが…)
最近の価格改定で大幅に値下げされていたので、『Core 2 Quad Q9650』の注目度・知名度は高いと思い込んでいました。全体的に説明足らずな記事になってしまい申し訳ありませんでした。
なお、まとめ部分の「消費電力も競合製品より高いという…」という一文の"競合製品"に関しては、「Core 2 Quad Q9000 シリーズ」の事を指しております。『Core 2 Extreme QX9650』より消費電力の高いCPUが、『Core 2 Extreme QX9650』と同じコアを採用し、より低いTDPでラインナップされている「Core 2 Quad Q9000 シリーズ」より低消費電力である事は考えられないので、競合製品より消費電力が高いと表記した次第でございます。やや言葉足らずな表現で申し訳ありません。
>消費電力の結果はこれまでに検証された国内、海外サイトの結果と比べるとちょっと違いすぎるかなと。
検証中、『Phenom II X4 940 BE』と比べて『QX9650』の消費電力がちょっと低いような気がしていたのですが、何度検証して確認しても同様の値だったので、そのまま掲載してみました。
4Gamer.netでは割と近い感じの結果になっているみたいな気がします。チップセットやTDP 130W対TDP 95Wの差を考えれば大体同じような感じではないかと思います。
http://www.4gamer.net/games/077/G007794/20090107035/
ただ、個人的に『Core 2 Extreme QX9650』の消費電力についてはちょっと思うところがあるので、別件で検証中です。
非常に興味深い記事をお示しいただきありがとうございます。海外レビューや出版社のように詳細に検討されていて、ためになりました。
現行のQ9650との比較であれば、両社のつけた値段相応の結果ですね。PheII940はQ9550〜9450相当といったところでしょうね。
あと、LOST PLANETの結果が消費電力のグラフになっていますね。
>LOST PLANETの結果が消費電力のグラフになっていますね。
ご指摘ありがとうございます。早急に訂正させて頂きました。
どうやら名無し さんにご指摘いただいていた消費電力グラフのデータ抜けを修正した際、誤って余計なところにまで消費電力グラフを上書きしてしまっていたようです。(汗
消費電力のグラフですが、「Idel」は「Idle」のスペルミスかと。コア毎の消費電力グラフですが、両社とも1-3個は等差で上がっていくのに対して、3-4個では増分が減るというのは興味深いですね。
私も940BEを使っていますが、電圧を各クロックで定格から一律125mV下げても800MHzから3GHzまで安定しています。この分だとAthlonシリーズの消費電力には期待できそうです。
>Q9650のことを知らずに、茶化すようなコメントを入れたことをお詫びします。
どうかお気になさらないでください。記事の内容としては『Core 2 Extreme QX9650』と『Phenom II X4 940 BE』の比較ですので、両製品の価格を考えれば到底同等品とは言えないという点については誰もが思うことだと思います。
消費電力に関しては難しいですね。出力によって効率が変化する電源ユニットを経由しているので消費電力の上昇率=CPUの消費電力変化とは言い切れませんし…。
※スペルミスは修正させて頂きました。ご指摘ありがとうございました。