Intel純正Mini-ITXマザーボード第3弾『D945GCLF』の検証記事その2です。"その2"ではWindows XP環境でのパフォーマンス検証がメインとなっています。


Atom 230 Pentium 4 631


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・『D945GCLF』の検証記事
…『Intel純正Mini-ITXマザー第3弾『D945GCLF』 検証その1
…『Intel純正Mini-ITXマザー第3弾『D945GCLF』 検証その2
…『Intel純正Mini-ITXマザー第3弾『D945GCLF』 検証その3
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検証環境&比較環境

 今回『D945GCLF』の検証を行うに当たり、比較用に初代Intel純正Mini-ITXマザーボード『D201GLYL』と、元祖Hyper-Threading Technology対応CPUのPentium 4 シリーズの最新版『Pentium 4 631』を用意しました。

なお、『Pentium 4 631』本来の動作クロックは3.0GHz@1.3Vですが、今回は『Atom 230』に合わせるためベースクロックを106MHzまでアンダークロックした状態でCPU電圧を1.05Vに引き下げています。


検証環境

CPUスペック比較



CPU性能比較1 〜Sandra XII SP2c 14.24〜

 まずは気になる『Atom 230』のパフォーマンスを確認する為、SiSoftwareのベンチマークソフト「Sandra XII SP2c 12.42」のスコア比較を行いました。


Sandra XII 2008 SP2c CPU [XP]


 『Atom 230』の結果を中心に見てみると、CPUの整数演算能力と浮動小数点演算能力を測定するCPU Arithmeticの結果では、Hyper-Threadingを有効にした状態で『Celeron 215』とほぼ同等のスコアとなっているものの、同じくHyper-Threadingを有効にしたPentium 4には浮動小数点演算能力で及ばないという結果になっています。

ただし、拡張命令セットを含めたCPUの演算能力を測定するCPU Multi-Mediaでは『Atom 230』が飛びぬけて高いスコアを叩き出しています。比較用に用意したCPUの中で『Atom 230』だけが"SSSE3"に対応している事が影響しているのかもしれませんね。



CPU性能比較2 〜CrystalMark 2004R3〜

 続いて、CrystalMark 2004R3のCPUテスト項目であるALUとFPUのスコアを比較してみました。


CrystalMark 2004R3 [XP]


 CrystalMark 2004R3やSandra XII SP2cは、Hyper-Threadingによる仮想コアも含めCPUコア数がスコアに反映されやすいベンチマークソフトなので、Hyper-Threadingを有効時の『Atom 230』や『Pentium 4』が『Celeron 215』とほぼ互角のスコアを出していますが、Hyper-Threading無効時の『Atom 230』のスコアをご覧頂ければお分かり頂けるように、シングルスレッドの処理能力はYonahコアを採用している『Celeron 215』が圧倒的に高いという結果になっています。

つまり、マルチスレッディングに対応しているアプリケーションならば『Atom 230』は『Celeron 215』に匹敵するパフォーマンスを発揮できるものの、マルチスレッディング非対応アプリケーションでは明らかに『Celeron 215』より劣る事になりそうです。



CPU性能比較3 〜Super PI〜

 ここまでマルチスレッド対応ベンチマークソフトの結果を2本紹介しましたが、次は代表的なシングルスレッドアプリケーションであるSuper PIを使って比較を行ってみました。


Super PI [XP]


 Super PIの結果では、3つのCPUの中で最も動作クロックの低い『Celeron 215』が61.031秒の最速タイムを記録しており、『Pnetium 4』が約20秒遅れの81.109秒、『Atom 230』に至っては30秒遅れの92.625秒となっています。

『Celeron 215』がSuper PIの得意な「Core Solo/Duo」と同じYonahコアを採用したCPUである事も、今回の検証で圧倒的なタイム差がついた事の理由の一つではありますが、Super PIにおける『Atom 230』のクロックあたりの処理能力は「Pentium 4」に及ばないという事になります。

 もっとも、比較用の『Pentium 4』には2MBの大容量L2キャッシュが搭載されているので、その恩恵がタイム差に表れていると言えなくもありませんが…。



CPU性能比較4 〜午後のこ〜だ&WME9〜

 CPU性能比較の最後に、午後のこ〜だに搭載されているベンチマーク機能「午後べんち」と、Windows Media Encoder 9を使って検証を行いました。

なお、Windows Media Encoder 9の検証には約45秒(81.5MB)の動画ファイルを利用しています。


午後のこ〜だ [XP]

Windows Media Encoder 9 [XP]


 午後べんちの結果ではSuper PIに引き続き『Celeron 215』が最も高いスコアを記録しており、以下『Pentium 4』、『Atom 230 (HT有効)』、『Atom 230 (HT無効)』の順に続いています。

『Atom 230』のHyper-Threadingを有効時と無効時のスコアを見ていただければお分かり頂けるように、午後べんちはマルチスレッディングに対応していますが、2スレッドを使っても『Atom 230』では『Celeron 215』に及ばないという結果になっています。

これはWindows Media Encoder 9でも同様で、『Atom 230』はHyper-Threadingを有効にする事で劇的にパフォーマンスが向上しているものの、純粋なシングルコアで動作クロックも低い『Celeron 215』に差をつけられてしまっています。

 クロックあたりの処理能力が高いCore系のアーキテクチャを採用している『Celeron 215』に、設計思想の異なる『Pentium 4』や『Atom 230』がクロック当たりの処理能力で劣っていることに関しては仕方ありませんが、こうした結果を見る限り『Atom 230』にCPU性能にはあまり期待しないほうが良いでしょう。



キャッシュ性能&メモリ帯域

 CPUの比較検証がひと段落したところで、次はSandra XII 2008 SP2cのMemory BandwidthとCache and Memoryを利用して、メモリ帯域とL1/L2キャッシュの性能を比較してみました。


Memory Bandwidth [XP]

Cache and Memory [XP]


 メモリ帯域を測定するMemory Bandwidthでは、「Intel 945GC」を搭載している『D945GCLF (Atom 230)』が最も優秀なスコアを出しています。流石にSiS製チップセット採用の『D201GLYL (Celeron 215)』には負けられないと言ったところでしょうか。

チップセット的には「Intel 945GC」よりも新しい「Intel G33」を搭載した『GA-G33-DS3R』を利用している『Pentium 4』環境のスコアが悪いのは、ベースクロックを無理やり引き下げているため、他の環境のメモリがDDR2-533相当で動作しているのに対し、『Pentium 4』環境ではDDR2-424相当で動作している為と思われます。



システム全体の消費電力とCPUの発熱

 最後にワットチェッカーを使って測定したシステム全体の消費電力と、『Atom 230』のCPUヒートシンク温度の実測結果を比較してみました。


消費電力比較 [XP]


 まず消費電力の比較グラフです。ロード時はStress Prime 2004を使ってすべてのCPUコアに負荷をかけた際の消費電力なのですが、『Atom 230』を搭載する『D945GCLF』はアイドル時に比べてわずか2Wしか増加していません。この為、アイドル時こそ『D201GLYL』と1W差になっているものの、ロード時には5Wにまで差を広げています。

この事から『Atom 230』自体の消費電力は4WというTDPが示してい通り非常に低い事がわかります。反面、トータルの消費電力で見た場合『D201GLYL』と大差がないのは搭載チップセットの消費電力が効いているからなのかも知れませんね。


発熱


 『D945GCLF』ではCPU側にファンレスの小型ヒートシンクしか搭載されておらず、発熱的には大丈夫なのかと不安になるのですが、実際に触ってみるとほのかに温かい程度で『Atom 230』の低発熱さを実感する事ができます。むしろ同型のヒートシンクを搭載した『D201GLYL』のノースブリッジ(SiS 662)の方が遥かに熱いです。

今回の温度測定結果は、室温20度でケースに入れず測定したものなので実際にPCとして組み上げた場合は更に高い温度で動作すると思われますが、チップセット用ヒートシンクに搭載されている小型ファンのおかげである程度のエアフローは確保できているので、『D201GLY2』のような事はないと思われます。



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 CPU性能では『D201GLYL』に劣る『D945GCLF』ですが、そもそもこの手の製品の場合高いCPU性能は必要とされていないので、『Atom 230』のパフォーマンスは合格点を挙げられるのではないかと思います。

ただ、肝心の消費電力面ではもう少し差をつけて欲しかったというのが本音でもあります。せっかく低消費電力CPUを搭載しているのですから、チップセットも省電力にフォーカスしたものを組み合わせればもっと低消費電力な製品になっていたように感じるので残念です。もっとも、この製品は省電力Mini-ITXマザーとして作られたものではなく、新興市場向け製品なので仕方がないのかもしれません。


 …それにしても今回比較用に用意した『Pentium 4 631』。購入する際はすっかり忘れていたのですが初期に出回ったB1 Stepping品はエラッタでEISTとC1Eが利用できないんですよね…。最近はB2 SteppingのPhenomでTLBエラッタがあると話題になりましたが、そういえばIntelにもこんなエラッタがありましたねぇ。




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