Intel純正CPUクーラーに採用され、サードパーティー製品の一部にも採用されているリテンションキット「プッシュピン」。この世からの消滅を願う過激な方もおられると聞くこのリテンションキットの仕組みと取り付け方を再確認してみようって話です。

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Intel純正クーラーが採用するプッシュピン


 プッシュピンは、IntelのCPUソケットがSocket 478からLGA775と変更されたあたりから、Intel純正CPUクーラーに採用されはじめたリテンションです。

 旧来のソケットのような台座を必要とせず、ツールフリーで簡単に取り付けられるプッシュピンは、ある程度慣れたユーザーならとっても楽に取り付けられるリテンションなのですが、「正しく固定したつもりだが、実は固定されていない」という状況になりやすいリテンションでもあり、取り付けに失敗してしまう方もいるようです。

 今回は、プッシュピンの仕組みを確認し、取り付け作業で抑えておくべきポイントを紹介していきます。



「返し」と「楔」で固定するプッシュピンの仕組み


 Intelの純正クーラーに採用されているプッシュピンは、黒と白、二つの樹脂パーツを組み合わせて作られています。白いパーツがマザーボードに接する部分で、黒いパーツは楔(くさび)として機能します。

 プッシュピン先端部分を見てみると、白いパーツにはマザーボード表面に接地する箇所と、マザーボード裏面にひっかける「返し」が設けられています。

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 CPUソケット周辺の固定穴に白パーツを挿し込んだ状態で、黒パーツの楔を挿入すると、白パーツ先端が開き、返し部分がマザーボードの固定穴の径よりも太くなって抜けなくなります。

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 実際にマザーボードへ取り付ける際、マザーボードの裏面からプッシュピンを観察すると以下の写真のような感じになります。楔が入っていない状態では返し部分が穴を通過し、楔が挿入されると白パーツが開いて返しが基板にひっかかる……とてもシンプルです。

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楔のない状態。先端が細くなっているため、返し部分も容易に穴を通過します。

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楔を挿入した状態。先端が開いて返しが基板に引っかかって抜けなくなっています。




楔の挿抜を制限するロック機能


 プッシュピンがCPUクーラーをマザーボードに固定する仕組みは先に紹介した通りですが、楔が抜ければ「返し」による固定機能は失われてしまいます。

 このため、純正クーラーのプッシュピンには、CPUクーラーを固定するときのために楔が挿入された状態でロックする機能を備えています。もちろん、取り外せなければならないので、このロックを解除することも可能です。

 このロック機能は、黒パーツを90度回転させることでロックと解除を切り替えられるようになっており、プッシュピンの上部にそれを示す矢印が刻印されています……が、説明書なしだとどっちがどっちかちょっとわかりづらいですね。

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ロック状態。楔を挿し込むこと抜けなくなります。

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アンロック状態。挿し込んだ楔を抜くことができます。

 さて、ここで重要なのは、取り付け時には「楔を抜いた状態」かつ「ロック機能を有効」にしておく必要があるということです。これ以外の状態では正常に取り付けることができません。

 なので、取り付けを行う前に以下の手順を実行します。

 々パーツを「アンロック」にする。
 黒パーツを上方向に引っ張り、「楔を抜いた状態」にする。
 9パーツを「ロック」にする。


 この手順を全てのプッシュピンに行うことで、確実にプッシュピンを取り付け可能な状態にできます。そんな大きな手間ではありませんし、正常な取り付けには必ず必要なことですので、取り付け前にはこの作業を行いましょう。



取り付け時のポイント 白パーツの状態に要注意


 プッシュピンの取り付けは、「CPUソケット周辺に設けられた固定用の穴に白パーツの先端を挿し込み、黒パーツを押して楔を挿入する」という簡単なものです。

 プッシュピンの固定に失敗する主な要因は2つあり、ひとつは先に紹介した黒パーツのロック機能が適切な状態にないまま取り付けた場合。もうひとつは白パーツが正しく挿し込まれていないというものです。

 以下の写真は典型的な失敗パターンで白パーツの先端が穴の縁に乗り上げてしまっています。この状態で楔を挿入すると、楔がロックされた「カチッ」という音がするのですが、白パーツは穴に入っていないので、当然ながら取り付けは出来ません。また、力を掛け過ぎると白パーツ先端が破損してしまう恐れもあります。

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失敗パターン。当然ながら固定されない上、白パーツが破損する可能性もあります。


 正常に取り付けるためには、黒パーツを押し込む前に、プッシュピンの白パーツの太くなっている箇所、マザーボード表面に設置する部分が基板にしっかり接地している状態にしておく必要があります。

 黒パーツをプッシュする前に、すべてのプッシュピンが以下の写真と同じ状態にしておきましょう。

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白パーツの表面側接地部が基板にきちんと接地している状態。




取り付けのポイント 対角線上のピンを同時に押して固定しましょう


 取り付けの失敗につながる要素はここまでで既に紹介し終えましたが、最後に取り付けの基本である「対角締め」を紹介しておきます。

 プッシュピンは4つのピンを挿し込むことでCPUクーラーを固定しますが、4つのピンには挿し込む順番が存在しています。最初に挿すピンはどれでも構いませんが、ひとつのピンを挿し込んだら、次に挿し込むのは対角線上にあるピンです。この考え方が、ねじ止めの基本である「対角締め」と同じです。

 ただ、プッシュピンは押すとそれで取り付けが完了しますし、両手を使えば2本のピンを同時押し込むことができます。なので、以下の写真で同じ色で示している対角線上のピンを同時に挿し込むのがベターです。

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同じ色の円で囲んだ対角線上のピンを同時にプッシュ!


 ちなみに、プッシュピンを挿し込むときは、マザーボードの化粧箱の上なんかにマザーボードを置いておくと良いでしょう。柔らかすぎるスポンジなどの上にマザーボードを置いておくと、ピンを押し込む力が逃げてしまったりすることもあってうまくいかないこともあります。




純正クーラーはとっても簡単。作業性の悪いサードパーティー製は……


 という訳で、Intel純正クーラーのプッシュピンを取り付ける際のポイントなんかを紹介しました。ね、簡単でしょう?

 ただ取扱説明書に従うだけより、リテンションがどういう構造なのかを観察して、なぜそうなっているのかを考えることは、正しい取り付けを実現する助けとなるでしょう。それはどんなリテンションキットでも同じことです。

 ちなみに、自作PCを趣味にしている人たちの中で、プッシュピンを邪悪な物、滅ぶべき物としている過激派の方々が問題にしているのはIntel純正クーラーのプッシュピンより、サードパーティー製のプッシュピンを指していることが多いと思われます。

 サードパーティー製品ではプッシュピンの上にヒートシンクが被っていたり、LGA775〜1366をサポートするため、長穴にプッシュピンを配置した製品が存在します。そのような製品では、ピンを押すだけ、白パーツを固定穴に差し込むだけ、たったそれだけの作業がとても困難になっています。

 作業性の悪いサードパーティー性であっても、失敗しない取り付けのために抑えるべきポイントは今回紹介した内容と同じです。もしプッシュピン式のCPUクーラーを取り付ける機会があったなら、今回紹介したポイントを思い出してもらえれば幸いです。