Richland勉強会の参加者に対し、ASUSにより課せられた『F2A85-M PRO』の試すべき4つの機能。今回はその一つ、「TPUスイッチ」を試してみました。

『F2A85-M PRO』の基板上には、TPUスイッチと呼ばれるDIPスイッチが搭載されています。このスイッチは、有効に切り替えると、オーバークロック関連の機能を担う専用チップ「TPU(TurboV Processing Unit)」が、安定性を重視したオーバークロック設定を自動で行ってくれるという代物です。
このスイッチを利用することで、オーバークロックについての知識を持たないユーザーであっても、スイッチを切り替えるだけでオーバークロック(=パフォーマンスアップ)が可能という、手軽さが売りのオーバークロック機能という訳ですね。
『F2A85-M PRO』のTPUスイッチは、フロントパネル用のピンヘッダ付近に設けられています。このスイッチが有効になっていると、スイッチ付近に実装されている赤色LEDが点灯するため、通電中のマザーボードを確認すれば、TPUの有効/無効は一目瞭然です。
スイッチの切り替えは、PCをシャットダウンしてから行います。なお、ASUSが独自機能として提供しているからと言って、オーバークロックであることには変わりないので、この機能を利用した時点でCPUなどの保証は失効することになるでしょう。TPUスイッチの利用は自己責任となるので、その点はお忘れなく。
では、TPUスイッチをオンにするとどの項目がどんな感じで変更されるのでしょうか。先日掲載したRichlandのGPU性能とメモリクロックのテスト記事で利用した機材を流用して、「Load Optimized Defaults」の自動設定と、「TPUスイッチオン」でロードされた設定を見比べてみました。
CPU倍率(APU Multiplier)が、Turbo CORE倍率の上限値である44倍に設定され、それに伴いCPU電圧のデフォルト値が0.05V程度上昇しています。その他、GPU Boost設定がTurboに設定されるようです。
実際にOSを起動してみたところ、CPUクロックは「CINEBENCH R11.5」のようなフルスレッド負荷の掛かるテストを実行した際にも4.4GHzで動作するようになっており、GPUクロックも844MHzから950MHzに上昇しています。
という訳で、『A10-6800K』と『F2A85-M PRO』の組み合わせでTPUスイッチオンをオンにした際の変更点としては、CPUとGPUクロックの上昇と、それに伴う電圧の昇圧ですね。安定性重視の設定であると謳っている通り、クロックの上昇もそこまで大幅なものではないようです。
ちなみに、メモリにはDDR3-2666スペックの物を搭載しているのですが、TPUスイッチのオン・オフに関わらず、メモリクロックとタイミング設定はSPDに近い「DDR3-1600@11-11-12-28」で、電圧設定はXMP設定の1.65Vが設定されています。
TPUをオンにすればメモリもある程度設定されると思っていたので、これはちょっと予想外でした。もしかして、AMP対応メモリなどであれば、プロファイルに基づいた設定が行われたりするのでしょうか?
さて、安定志向でパフォーマンスアップを図るという「TPUスイッチ」をオンにした場合、パフォーマンスはどの程度変化するのでしょうか。CPUベンチマークテストの「CINEBENCH R11.5」と、最新版「3DMark」のスコアを比較してみました。
BIOSの設定については、先に紹介した「Load Optimized Defaults」とTPUスイッチオン時の設定をそのまま利用しています。なので、DDR3-2666スペックのメモリを使っていますが、実際の動作はDDR3-1600@11-11-12-28ですね。
CPUテストの「CINEBENCH R11.5」では、シングルスレッドで処理を行った際はTPUオン・オフともにスコアは1.13で差が付きませんでしたが、マルチスレッドで処理を行うとTPUオン時のスコアが、オフ時より4%ほど高くなっています。
比較的軽い負荷では、TPUがオフでもTurbo COREによってCPUクロックが4.4GHzで動作するため差がつかず、Turbo COREの最高クロックが維持できないフルスレッド負荷時は、高負荷時のCPUクロックを4.4GHzに固定しているTPUオン時のスコアが高くなったようです。

3Dベンチマークテストの「3DMark」でも、TPUオン時にパフォーマンスが向上していることが確認できます。スコアアップの程度としては、DirectX 9対応の「Ice Storm Extreme」が2%前後、DirectX 10対応の「Cloud Gate」は3%前半から中盤程度、DirectX 11対応の「Fire Strike」では4〜5%程度となっており、GPU負荷が高くなるにつれてパフォーマンス差が拡大しています。
GPUクロック的には、844MHzから950MHzへと約12.6%のクロックアップを果たしているのですが、このクロック差がスコアへリニアに反映されている訳ではありませんね。
Richlandのメモリテストで紹介した通り、メインメモリのクロックはGPU性能のボトルネックになっているので、TPUスイッチの設定に加え、手動でメモリ設定を行えば、もう少しパフォーマンスアップを狙えそうです。



TPUスイッチをオンにすることで得られるパフォーマンスアップについては、今回のテストでは10%に満たない程度に留まりました。元々、大幅なパフォーマンスアップを目的とした機能ではないので、まぁこんなものでしょう。
ついでに、各ベンチマーク時のピーク時消費電力を測定した結果が以下の通りです。「3DMark」実行中はさほど消費電力の変動が無い一方で、「CINEBENCH R11.5」実行中の消費電力については、11〜14%ほど増加しています。
CPU電圧を引き上げていることが影響しているようですが、スコア差と合わせて考えると消費電力差がちょっと大きいように感じますね。

今回は単純にTPUをオンにした場合の設定やパフォーマンスを確認してみました。謳い文句通り、スイッチを切り替えるというだけの手軽さでパフォーマンスアップを実現できるのは確かですが、そのオーバークロック設定については、手軽さなりの簡単な設定に留まっている印象です。
TPUスイッチを利用する場合でも、メモリ周りについては使用している機材に応じた設定を追加で行いたいところです。

スイッチ一つでオーバークロックを行う「TPUスイッチ」
『F2A85-M PRO』の基板上には、TPUスイッチと呼ばれるDIPスイッチが搭載されています。このスイッチは、有効に切り替えると、オーバークロック関連の機能を担う専用チップ「TPU(TurboV Processing Unit)」が、安定性を重視したオーバークロック設定を自動で行ってくれるという代物です。
このスイッチを利用することで、オーバークロックについての知識を持たないユーザーであっても、スイッチを切り替えるだけでオーバークロック(=パフォーマンスアップ)が可能という、手軽さが売りのオーバークロック機能という訳ですね。
『F2A85-M PRO』のTPUスイッチは、フロントパネル用のピンヘッダ付近に設けられています。このスイッチが有効になっていると、スイッチ付近に実装されている赤色LEDが点灯するため、通電中のマザーボードを確認すれば、TPUの有効/無効は一目瞭然です。
スイッチの切り替えは、PCをシャットダウンしてから行います。なお、ASUSが独自機能として提供しているからと言って、オーバークロックであることには変わりないので、この機能を利用した時点でCPUなどの保証は失効することになるでしょう。TPUスイッチの利用は自己責任となるので、その点はお忘れなく。
TPUスイッチをオンにすると、どのあたりの設定が変わるのか
では、TPUスイッチをオンにするとどの項目がどんな感じで変更されるのでしょうか。先日掲載したRichlandのGPU性能とメモリクロックのテスト記事で利用した機材を流用して、「Load Optimized Defaults」の自動設定と、「TPUスイッチオン」でロードされた設定を見比べてみました。
TPUスイッチ | OFF | ON |
---|---|---|
APU Multiplier | Auto | 44 |
GPU Boost | Auto | Turbo |
CPU電圧(Default値) | 1.312V | 1.362V |
CPU倍率(APU Multiplier)が、Turbo CORE倍率の上限値である44倍に設定され、それに伴いCPU電圧のデフォルト値が0.05V程度上昇しています。その他、GPU Boost設定がTurboに設定されるようです。
実際にOSを起動してみたところ、CPUクロックは「CINEBENCH R11.5」のようなフルスレッド負荷の掛かるテストを実行した際にも4.4GHzで動作するようになっており、GPUクロックも844MHzから950MHzに上昇しています。
という訳で、『A10-6800K』と『F2A85-M PRO』の組み合わせでTPUスイッチオンをオンにした際の変更点としては、CPUとGPUクロックの上昇と、それに伴う電圧の昇圧ですね。安定性重視の設定であると謳っている通り、クロックの上昇もそこまで大幅なものではないようです。
ちなみに、メモリにはDDR3-2666スペックの物を搭載しているのですが、TPUスイッチのオン・オフに関わらず、メモリクロックとタイミング設定はSPDに近い「DDR3-1600@11-11-12-28」で、電圧設定はXMP設定の1.65Vが設定されています。
TPUをオンにすればメモリもある程度設定されると思っていたので、これはちょっと予想外でした。もしかして、AMP対応メモリなどであれば、プロファイルに基づいた設定が行われたりするのでしょうか?
パフォーマンスの向上は如何ほど?
さて、安定志向でパフォーマンスアップを図るという「TPUスイッチ」をオンにした場合、パフォーマンスはどの程度変化するのでしょうか。CPUベンチマークテストの「CINEBENCH R11.5」と、最新版「3DMark」のスコアを比較してみました。
BIOSの設定については、先に紹介した「Load Optimized Defaults」とTPUスイッチオン時の設定をそのまま利用しています。なので、DDR3-2666スペックのメモリを使っていますが、実際の動作はDDR3-1600@11-11-12-28ですね。
テスト機材 | |
---|---|
APU | AMD A10-6800K |
マザーボード | ASUS F2A85-M PRO (BIOS ver.6204) |
メモリ | G.SKILL F3-2666C11Q-16GTXD (4GB×4) |
ストレージ | Plextor M5 Pro Xtreme 128GB |
電源ユニット | SilverStone SST-ST85F-G (850W/Gold認証) |
VRAM容量 | 768MB |
VGAドライバ | AMD Catalyst 13.4 |
OS | Windows 8 Pro 64bit |
CPUテストの「CINEBENCH R11.5」では、シングルスレッドで処理を行った際はTPUオン・オフともにスコアは1.13で差が付きませんでしたが、マルチスレッドで処理を行うとTPUオン時のスコアが、オフ時より4%ほど高くなっています。
比較的軽い負荷では、TPUがオフでもTurbo COREによってCPUクロックが4.4GHzで動作するため差がつかず、Turbo COREの最高クロックが維持できないフルスレッド負荷時は、高負荷時のCPUクロックを4.4GHzに固定しているTPUオン時のスコアが高くなったようです。

3Dベンチマークテストの「3DMark」でも、TPUオン時にパフォーマンスが向上していることが確認できます。スコアアップの程度としては、DirectX 9対応の「Ice Storm Extreme」が2%前後、DirectX 10対応の「Cloud Gate」は3%前半から中盤程度、DirectX 11対応の「Fire Strike」では4〜5%程度となっており、GPU負荷が高くなるにつれてパフォーマンス差が拡大しています。
GPUクロック的には、844MHzから950MHzへと約12.6%のクロックアップを果たしているのですが、このクロック差がスコアへリニアに反映されている訳ではありませんね。
Richlandのメモリテストで紹介した通り、メインメモリのクロックはGPU性能のボトルネックになっているので、TPUスイッチの設定に加え、手動でメモリ設定を行えば、もう少しパフォーマンスアップを狙えそうです。



TPUスイッチをオンにすることで得られるパフォーマンスアップについては、今回のテストでは10%に満たない程度に留まりました。元々、大幅なパフォーマンスアップを目的とした機能ではないので、まぁこんなものでしょう。
ついでに、各ベンチマーク時のピーク時消費電力を測定した結果が以下の通りです。「3DMark」実行中はさほど消費電力の変動が無い一方で、「CINEBENCH R11.5」実行中の消費電力については、11〜14%ほど増加しています。
CPU電圧を引き上げていることが影響しているようですが、スコア差と合わせて考えると消費電力差がちょっと大きいように感じますね。

手軽さなりのオーバークロックセッティング
今回は単純にTPUをオンにした場合の設定やパフォーマンスを確認してみました。謳い文句通り、スイッチを切り替えるというだけの手軽さでパフォーマンスアップを実現できるのは確かですが、そのオーバークロック設定については、手軽さなりの簡単な設定に留まっている印象です。
TPUスイッチを利用する場合でも、メモリ周りについては使用している機材に応じた設定を追加で行いたいところです。
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