去る8月1日、新宿の日本AMD本社で開催されたブロガー向け勉強会『AMDの「APUって何?」を学ぶブロガー勉強会』に参加してきました。

●APUとは?
 APUという名称については、機能の革新と共にトランジスタからマイクロプロセッサ、マイクロプロセッサからCPUへと呼称の変わってきたプロセッサーの次代を担うものこそが、CPUとGPUを融合したAPUであるとのことでした。現状のA-series APUについては、定評のあるCPUとミドルレンジGPUを融合したものであるとのことで、「APUは従来オンボードグラフィックとは違い、CPUにRadeonを搭載している」という点を強調されていました。

 今でこそDirectX 11対応のGPUコアを搭載したIvy Bridgeが発売されていますが、Llanoが登場した時点ではIntel CPUのiGPUはDirectX 10.1止まりでしたし、現在でもデスクトップ版A8シリーズが搭載するRadeon HD 6550Dは、CPU内蔵GPUとしては最高峰の性能を持っていますから、確かにLlanoが内蔵するGPUはこれまでにない強力なものだったと言えますね。

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●APUの利点
 続いて、APUの利点を紹介するデモンストレーションとして、GPUによる処理を有効にした場合と無効にした場合とで、PowerPointでスライドを切り替える際のアニメーションが滑らかに描画される様子や、WinZIPを使ったファイルの圧縮にGPUを利用することでより短時間で圧縮が終了する様子が紹介されました。その他にAMD Steady Video(ぴったりビデオ)やビデオエンハンスメントなどの機能紹介もありましたが、こちらは実演デモはありませんでした。個人的にはこちらの機能のデモンストレーションの方が見たかったので、実演デモが無かったのはちょっと残念でしたね。

 GPUの持つ3D描画性能については、DirectX 11対応の美麗なグラフィックが楽しめる点や、従来の内蔵GPUやオンボードGPUではプレイが困難であったカジュアルゲームやオンラインゲームがプレイできることも、Radeonを内蔵するAMD A-series APUの利点であるとされていましたが、このあたりもデモンストレーションは特にありませんでした。例えばですが、こういうゲームがプレイできるよーというゲームタイトルの紹介とかがあると面白いかもですね。

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●HSAとGPUを活用するアプリケーション
 森本氏のセッションの最には、AMD、ARM、Imagination、MediaTek、Texas Instrumentsが共同で設立したヘテロジニアス・システム・アーキテクチャー(HSA)財団が紹介されました。同財団は「CPUとGPUを併用するプログラムを同程度の開発労力でプログラミングできるオープンな環境を提供すること」、「AMD、ARM、Power PCなどで共通のプログラミングプラットフォームを作り出す」ことを目的としているそうです。ようは様々なコアを利用しやすいプログラミングを可能にすることで、APUのようなヘテロジニアスプロセッサの性能を引き出せるアプリケーションを増やそうってのが狙いといったところでしょうか。

 GPUを処理に利用するソフトウェアについては着実に増えていることも紹介され、有名どころではAdobe Photoshop CS6やGoogle Chrome、フリーソフトのGIMPなどがGPUを活用するようになっているとのことでした。GPUを活用する場面が増えるということは、APUが備える内蔵GPUの活躍の場が増えることを意味するわけで、ゲーム以外でもそのパフォーマンスを発揮できる機会が増えつつあると言えますね。HSA財団によって、そうした流れが加速していくのなら、ゲーミングのような3D描画以外の目的でGPUを選ぶ時代が来るのかもしれません。

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●質問タイムとか熱設計のお話とか省電力機能の紹介とか
 森本氏のセッションのあとは、質問タイムを挟んで、熱設計関連の話と省電力機能周りのマニアックなプレゼンテーションがありました。後半のプレゼンテーションについては、スライドの撮影が禁止で資料も手元に無かったので、なかなか頭に入ってきませんでした。(汗) その中でも、省電力機能はmW単位で細かく電力供給をオンオフする制御を積み重ねていると仰られていたのは印象的でした。塵も積もれば何とやらって感じですね。

 質問コーナーでは、なかなかハイレベルな質疑応答が交わされ、ついていけない内容もありましたが、「メモリのチャンネル数を増やさないのか」とか、「8コアとハイエンドGPUを組み合わせたAPUを作らないのか」と言った内容の質問も上がっていました。これらの質問について、前者についてはCPUピンの数的に難しく、特にノートPC向けのBGAパッケージとなると実装面積的にも困難になってしまうとのとのことで、後者についてはダイサイズ的に難しいというような回答がありました。でも、8コア+GCNなGPUのAPUなんてなかなか夢がありますよね。



■AMDらしい雰囲気のイベントだった第一回(?)勉強会
 正直なところ予想とはずいぶん違う内容のイベントではあったのですが、AMDらしい雰囲気のイベントでしたのでなかなか楽しい時間を過ごすことが出来ました。AMD的には今後も同様のイベントを開催したいと考えているそうなので、次回以降の開催にも期待したいです。

 ちなみに、今回のイベントでは当選者が全員自作の出来る方だったためか、全員に「A8-3870K」とGigabyte製のAMD A75チップセット搭載マザーボード「GA-A75M-DS2 (rev. 2.0)」が配られました。会場に用意されていた誓約書によると、これを使って8月26日までにPCを製作する必要があるのですが…さて、どうしたものでしょうね。 まな板とかT-ShooterってPCに入るのかな?