Corsairの簡易水冷ユニット『CWCH50-1』の冷却性能検証第一弾です。昨年最も注目集めたCPUクーラーの実力は如何ほどのものなのか? LGA 775環境で空冷CPUクーラーと性能を比較してみました。

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◆ 検証条件と、検証中に発生した不具合および対処について

 今回の検証は、「CPU Cooler Test Regulation for LGA 775」で定めた独自の条件に基づき、『CWCH50-1』と他のCPUクーラーの冷却性能を比較したものです。

 ただし、今回の検証において、オーバークロック時にチップセットまたはメモリの過昇温による不具合が発生したため、周辺パーツに対し追加ファンを用いた補助冷却を行いました。よって、『CWCH50-1』の周辺冷却性能に関してはデータ無しとし、他のCPUクーラーとの比較は行っていません。

 発生した不具合の内容は、BIOSで過昇温の監視および抑制機能を無効にしているにも関わらず、負荷テスト開始から数分後にCPU温度が大幅に低下し、以降負荷テスト中はその温度を維持するというものです。この際、CPUクロック・電圧・負荷状況に異常は見られませんでしたが、不具合が発生した際に、チップセットやメモリなどの周辺パーツに対して送風を行ったところ、CPU温度が不具合発生直前の温度まで急上昇したため、不具合の原因を周辺パーツの過昇温が原因と判断し、ケースファンを用いて周辺パーツの補助冷却を行いつつ検証を続行しました。

なお、過去に検証したCPUクーラーでは上記のような温度の急激な変化は起っておらず、今回と同様の不具合が発生していた可能性は無いと考えて頂いて問題ありません。『CWCH50-1』をバラック組で検証した際、チップセットやメモリに対して一切風が当たらない状態になっていたことが、今回の不具合の要因であると思われます。



◆ 比較用CPUクーラー

 今回『CWCH50-1』の比較用に用意したCPUクーラーは、コストパフォーマンスに優れたScytheの新型サイドフロー型CPUクーラー『夜叉』と、ハイエンドCPUクーラーとして冷却性能に定評のあるThermalright『TRue Black 120』、『Megahalems』、Noctua『NH-D14』の計4製品を用意しました。

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▲ Corsair『CWCH50-1』

夜叉 TRue Black 120
▲ 左:Scythe『夜叉』 右:Thermalright『TRue Black 120』

Megahalems Noctua『NH-D14』
▲ 左:PROLIMA TECH『Megahalems』 右:Noctua『NH-D14』





◆ 冷却性能検証・その1 〜 定格動作時 〜

 まず、『Core 2 Extreme QX9650』を定格の3.0GHzで動作させて行った冷却性能検証の結果を紹介します。

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 『CWCH50-1』の結果を見ていくと、低速ファンの「S-FLEX 800rpm」や「SKAZE-JYUNI 1200rpm」を搭載した際に、空冷最高峰の性能を誇る『Megahalems』や『NH-D14』を凌ぐ結果を記録しています。僅差ではありますが、性能差が温度差に表れづらい条件で空冷最高峰の製品に1〜2℃のアドバンテージは素直に評価できる数字だと思います。

ただし、低速ファンとの組み合わせを含めて全体的にデュアルファン化の効果は薄く、シングルファンでは2℃の差をつけて単独トップとなっている「S-FLEX 800rpm」との組み合わせでも、デュアルファン構成時には『Megahalems』や『NH-D14』に追いつかれ、「KAZE-JYUNI 1900rpm」をデュアルファン構成で搭載した際には2℃の差をつけ返されています。ネジを用意すればデュアルファン化が可能な『CWCH50-1』ですが、この結果を見る限りデュアルファン化の恩恵はさほど大きくなさそうです。

 オリジナルファンの結果に関しては1700rpmで回転しているものの、CPU温度に関しては「KAZE-JYUNI 1200rpm」と同じ結果になっています。と言っても、「KAZE-JYUNI 1200rpm」と「KAZE-JYUNI 1900rpm」搭載時の温度差は1℃しかありません。『CWCH50-1』自体、ファンのスペック向上による性能向上自体あまり大きくない傾向にあるようですね。




◆ 冷却性能検証・その2 〜 オーバークロック動作時 〜

 続いて、『Core 2 Extreme QX9650』を4.0GHz@1.575Vにオーバークロックして行った検証の結果を紹介します。

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 定格動作時は空冷CPUクーラーの最高峰を上回る場面もあった『CWCH50-1』ですが、発熱量が大幅に増加したこの条件ではハイエンドCPUクーラーに並ぶどころか、コストパフォーマンス重視の製品である『夜叉』にすら及ばないという結果になっています。

検証中はラジエーターやウォーターチューブ自体もかなり熱を持っており、ファーストインプレッションで触れたラジエーターの放熱フィン面積の少なさが、ボトルネックになっているような状況でした。ファンの性能向上やデュアルファン化の効果が薄いのも、このラジエーターの放熱面積の少なさに原因があるのかもしれません。




◆ まとめ 〜 定格では空冷を凌駕するも、OC耐性の限界はイマイチ 〜

 定格で動作する『Core 2 Extreme QX9650』程度の発熱源に対してなら、低速ファンとの組み合わせで空冷最高峰のCPUクーラーを凌駕するパフォーマンスを誇るものの、大幅なOCと昇圧を施した際には放熱能力がボトルネックとなって空冷CPUクーラーの逆転される程度の性能を持った製品…というのが、『CWCH50-1』を今回検証した結果です。

圧倒的な人気と高い評価を誇る製品だけに、オーバークロック時の結果は個人的にちょっとがっかりなのですが、これほど極端に電圧を上げなければある程度のオーバークロックは難なくこなせるでしょう。その辺は、ちょうど今回のテストの中間程度の発熱源での検証となるAMD環境で検証していきたいと思います。


 さて、今回の検証結果ではオーバークロック時にイマイチな結果を記録した『CWCH50-1』ですが、ネット上ではそれなりにオーバークロックを施した環境で『Megahalems』などを上回るという結果を良く目にしたりします。これはどういう事なのでしょうか。

『CWCH50-1』は取り付けの際、通常ケース内から排気する方向にファンを取り付けるPCケース背面に、ケース外から吸気する方向でラジエーターを設置するよう推奨されています。この取り付け方をすると、ラジエーターの冷却にはPCケース外の空気を利用することになり、様々な機器が詰め込まれて室温より高い温度になっているケース内温度より効果的にラジエーターを冷却することができます。つまり、ケース内の空気を使って冷却するしか無い空冷CPUクーラーとの決定的な差はここです。逆に、ケース内エアフローが乱れるのを嫌って排気方向で取り付けた場合、温度の低いケース外の空気を使えるというメリットが無くなるため、今回の検証結果に近い条件になってしまいますね。

 『CWCH50-1』のポテンシャルを最大限に引き出すためには、PCケース背面から吸気する必要があるということになります。ということは、必然的に他の箇所に排気ファンを設置してケース内のエアフローを確保する必要が出てくることになるので、出来ればケース上面に排気ファンのついているケースと組み合わせた方が良いかと思われます。

さらに、今回はバラック組で周辺パーツへのエアフローが皆無だったということもありますが、空冷CPUクーラーほど周辺パーツへの影響力がないのは間違いないので、オーバークロックした状態で長期運用するのであれば、周辺パーツの発熱対策も行う必要があるでしょう。水冷CPUクーラーとしては取り付けが簡単で価格も1万円以下と、導入しやすい製品ではありますが、しっかりポテンシャルを引き出して運用していくためにはそれなりに手間が掛りそうですね…。




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