以前掲載したサーマルグリス検証記事の比較条件に基づいて、Noctuaの『NT-H1』と、PC用熱伝導補助剤の最高峰と名高いCoollaboratoryの液体金属『LIQUID Pro』の2製品の性能を検証してみました。

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◆ 熱伝導率82.0W/mkを誇る液体金属『LIQUID Pro』

 Coollaboratoryの『LIQUID Pro』は、他の製品とは一線を画す82.0W/mkという高い熱伝導率を誇る液体金属です。以前レビューした『LIQUID Metal Pad』は、常温では固体なので、取り付け後加熱して一度融解させなければ性能を発揮できませんでしたが、『LIQUID Pro』は常温で液体の金属なので、塗布するだけで熱伝導補助剤としての性能を発揮することができます。

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 非常に高い熱伝導率を誇る本製品ですが、性質上注意しなければならない点が多いため、取り扱いに際しては他のグリス以上に注意しなければなりません。代表的な注意点を挙げると以下のようになります。

アルミニウムを腐食する。(銅・銀は問題無し)
ある程度時間が経つと固着してしまう。
金属なので導電性がある。
液体なので、塗り過ぎた場合流れ出してしまう。

 ,筬△砲弔い討蓮△海寮宿覆寮質としてよく知られている点なのですが、アルミニウム製のベース面を持ったCPUクーラーに『LIQUID Pro』を使うと、ベース部が腐食してしまい使い物にならなくなってしまいます。…とは言え、ここしばらくは『LIQUID Pro』に見合う価格で販売されているCPUクーラーの多くが、性能を重視して銅製のベース面を採用していたので問題ありませんでした。

しかし、最近採用するCPUクーラーが増えてきたヒートパイプ直接設置型CPUクーラーのほとんどが、銅製のヒートパイプとアルミ製のベース面という組み合わせとなっているので、これに『LIQUID Pro』を使用すると、アルミ部分が腐食してしまいます。

ベース面
▲ TITAN『FENRIR』のベース面。ヒートパイプは銅でもベース部はアルミ。


 サーマルグリスでも金属を混合した製品には導電性を持った製品もあるので、に関しては『LIQUID Pro』に限った事ではありません。ただ、液体であるため塗り過ぎた際に流れだしてしまうという、い寮質と組み合わさっているため、導電性を持っていることのリスクが他のグリスより高くなっています。

LGA 775のようなソケットの形状をしていれば、流れ出したとしてもソケットカバーとヒートスプレッダのあたりである程度止まってくれるので良いのですが、LGA 1156のようなソケットカバーを閉じた状態でもソケット側のピンが見えるような仕様だと、ソケット内部に流れ込む恐れもあります。『LIQUID Pro』を使用する場合は、このあたりにも十分注意された方が良いでしょう。

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▲ IntelのLGA 1156。端子部に流れ込んむとショートしてマザーとCPUを破損する恐れも…。





◆ 『NH-D14』にも同梱されているNoctuaのサーマルグリス『NT-H1』

 先日レビューを掲載した、NoctuaのハイエンドCPUクーラー『NH-D14』に同梱されているグリスが、この『NT-H1』です。

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 日本国内での取り扱い店舗が少ないNoctua製品ですが、『NT-H1』は秋葉原のオリオスペックで980円で単品販売もされています。価格的には、ハイエンドのグリスと比較すると若干安いですが、そこまで安い訳ではない中堅クラスの製品といったところですね。

 …今回は『NH-D14』に同梱されていたという理由で比較対象に加えただけだったりします。




◆ 比較製品一覧と検証条件について

 今回の性能比較検証では、従来のサーマルグリス検証記事と条件を合わせて検証を行い、『LIQUID Pro』と『NT-H1』の性能を過去に検証した製品とも比較しています。

 検証条件については過去の記事にも記載していますが、室温25.0±0.5℃の環境下で、Stress Prime 2004によるCPU負荷100%状態を20分継続した際のCPU温度をLoad時、その後負荷を掛けずに10分放置した後のCPU温度をIdle時として測定したものを比較しています。

CPUに関しては4.0GHz@1.575Vまでオーバークロックした状態で検証を行っているほか、CPUクーラーには『KAZE-JYUNI 1200rpm』を1基取り付けた『Megahalems』を利用しています。検証用PCのパーツ構成は以下の通りとなっています。

検証環境


 比較するグリスの一覧は以下の通りとなります。

比較用グリス一覧
メーカー製品名熱伝導率内容量価格情報
CoollaboratoryLIQUID Pro82.0 W/mK0.15ml ?最安値情報
NoctuaNT-H1非公開1.4ml未掲載
Arctic CoolingMX-38.2 W/mK4.0g最安値情報
CoollaboratoryLiquid Metal Pad126.0 W/mK3枚最安値情報
ZALMANZM-STG24.1 W/mK3.5g最安値情報
コスモ石油ルブリカンツSF1011.3 W/mK?g最安値情報
AinexGS-021.8 W/mK1.0g300円前後
Arctic SilverAS-059.0 W/mK3.5g最安値情報
Arctic SilverAS-045.1 W/mK2.5g最安値情報
GELIDGC-EXTREME8.5W/mk3.5g最安値情報
GELIDGC-2非公開7.0g最安値情報
OCZFreeze Extreme3.8 W/mK3.5g最安値情報
ScytheThermal Elixer非公開3.5g最安値情報
ThermalrightCF2非公開4.0g最安値情報
親和産業ICD7C4.5 W/mK1.5g最安値情報
親和産業KP9210.0 W/mK3.5g最安値情報
Prolimatech付属品非公開不明
Scythe付属品非公開不明
Thermaltake付属品非公開不明





◆ 検証結果 〜 LIQUID Proがリード 〜

 それでは各グリスの検証結果をご紹介します。なお、今回新たに検証を行った『LIQUID Pro』と『NT-H1』に関しては、グラフのカラーを若干変えてあります。

検証結果


 検証の結果、『LIQUID Pro』がこれまでの検証でトップの成績を残していた『Thermal Elixer』と『Liquid Metal Pad』より 1℃ 低い 65℃ を記録し、比較した全19製品のトップに立ちました。

他の製品に対して、熱伝導率のスペックほど圧倒的な差をつけた訳ではなく、コストパフォーマンスまで考えると、必ずしも『LIQUID Pro』が他の製品より優れているとは言い難い感もあります。しかし、「1℃でも低い温度を目指したい」という拘りがあるのなら、最上級の性能を持つ『LIQUID Pro』が魅力ある選択肢であることは確かだと思います。

 『NT-H1』に関しては、Load時に『ICD7C』などと並ぶ67℃を記録しました。980円程度で単品販売されている製品としては、なかなか優秀な結果と言えますね。これが同梱されているNoctua製のCPUクーラーを購入されたなら、よほどグリスにこだわりがない限り、わざわざ別売り品のグリスを購入して塗布する必要は無いと思います。




◆ まとめ 〜 確かに最上級の性能を持っていた『LIQUID Pro』 〜

 CPUの発熱をCPUクーラーが放熱するまでの流れの中で、接地面のスキマという大きなボトルネックを緩和するサーマルグリスの役割は非常に重要なもの要素です。しかし、最終的にCPUを冷却するのはCPUクーラーであり、如何に良いグリスを使ったとしてもボトルネックを緩和するだけで、CPUがグリスで冷える訳ではありません。

これまで4回に渡ってサーマルグリスの検証を行ってきましたが、高性能なグリスはそれに見合った性能を持ったCPUクーラーと強力な発熱源があってこそ活きてくる物だというのが個人的な見解です。もしかしたら、今回の検証で『LIQUID Pro』が圧倒的な結果を出せていないのは、私が用意できる空冷CPUクーラーレベルでの検証では『LIQUID Pro』の真価が問えていないからなのかも知れません。

 個人的には『LIQUID Pro』を使用することで得られるメリットより、デメリットの方が大きいと思っているので、人に勧めするなら導通性のなく比較的安価なサーマルグリスを薦めます。もっとも、PC全体に掛るコストから考えればグリスの価格など大した額ではありませんし、この程度の価格差なら最高のものを使いたいという方もおられるでしょう。

単に冷えるから使ってみたいというだけでなく、デメリットやリスクを知った上で『LIQUID Pro』を購入されるのであれば、私はそれはそれで良いと思います。やっぱり、細部にまでこだわって自作するのは楽しいですしね。




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