2009年10月20日

 前回『HD4850-512-GS』と『BATTLE-AXE VD964』の組み合わせで行ったサーマルグリスの性能比較では、『BATTLE-AXE VD964』の冷却能力に余力があり過ぎた為、フルロードでも50℃以下という低い温度での比較となっていました。

 そこで、今回は『Core 2 Extreme QX9650』を4.0GHz@1.575にオーバークロックし、CPU温度が60℃を超えるような環境でグリスの性能差を比較してみました。

トップ




◆ 検証したサーマルグリス一覧

 今回比較検証を行ったグリスは、前回の検証で比較を行った10製品の他に、親和産業のダイヤモンドグリス『ICD7C』と、熱伝導率10Wと嘯く謳うジャーマングリス『KP92』の市販品2製品と、『Megahalems』に同梱されているグリスを加えた計13製品の性能検証を行います。

各グリスのスペックについては以下の表をご覧下さい。

比較用グリス一覧
メーカー製品名熱伝導率内容量価格情報
AinexGS-021.8 W/m・K1.0g300円前後
Arctic SilverAS-059.0 W/m・K3.5g最安値情報
Arctic SilverAS-045.1 W/m・K2.5g最安値情報
GELIDGC-EXTREME非公開3.5g最安値情報
GELIDGC-2非公開7.0g最安値情報
OCZFreeze Extreme3.8 W/m・K3.5g最安値情報
ScytheThermal Elixer非公開3.5g最安値情報
ThermalrightCF2非公開4.0g最安値情報
親和産業ICD7C4.5 W/m・K1.5g最安値情報
親和産業KP9210.0 W/m・K3.5g最安値情報
Prolimatech付属品非公開不明
Scythe付属品非公開不明
Thermaltake付属品非公開不明


 前回の検証が結果的に、低い温度で動作している場合にグリス毎に生じるパフォーマンスを比較したものだったのに対し、今回の検証はフルロード時の温度が最低でも60℃を切らないように調整しているので、今回こそハイエンドグリスの真価が問われる検証になるかと思います。



◆ 検証環境と検証方法

 今回の検証では、『CPU Cooler Test Regulation for LGA 775』で利用しているテストPCを利用してグリスの検証を行っており、BIOS設定やパーツ構成は基本的にそちらに準拠しています。

また、検証方法についても「CPU Cooler Test Regulation for LGA 775」と同様で、「StressPrime 2004」を使って全コアをフルロードにした状態で20分が経過した時点の温度をLoad時とし、負荷テストを停止してから10分が経過した時点の温度をIdle時として測定しています。なお、測定には「HWMonitor 1.14」を利用しています。

検証環境

検証環境


 「CPU Cooler Test Regulation for LGA 775」で定めている内容と異なるのは、検証時の室温を25.0±0.5℃に設定している事と、CPUクーラーに『KAZE-JYUNI 1200rpm』を取り付けた『Megahalems』を利用した事、ビデオカードに『HD4850-512-GS』を利用した事の三点です。



◆ 性能比較検証 〜 最大で14℃もの温度差!? 〜

 相変わらず前置きが長くなりましたが、下掲のグラフが各グリスの検証結果を纏めたものとなります。なお、グラフ中では各グリスの結果をLoad時の温度を昇順に並べて表示しています。

グラフ1


 Load時の温度が最も低かったのは、前回の検証でも上位に位置していたScytheの『Thermal Elixer』の66℃で、1℃差の67℃には『GC-EXTREME』や『Freeze Extreme』など前回の検証で上位だった製品と共に、注目のダイヤモンドグリス『ICD7C』が並んでいます。

『ICD7C』が優れた結果を残している一方、同じく親和産業の取り扱い製品である『KP92』は、スペック的には比較製品の中で最高の10.0W/m・Kという熱伝導率を謳っているものの、Load時の温度は80℃で、トップの『Thermal Elixer』から14℃、ブービーの『GS-02』からすら8℃差をつけられており、比較製品13製品中断トツの最下位となっています。これは流石に…。


 一部断トツの最下位も存在していますが、それを除いても前回の検証に比べて各グリスの温度差は大きくなっています。ただし、この温度差をパーセンテージに直すとトップの『Thermal Elixer』から『GS-02』までの性能差は10%以下となっており、前回の検証で『GC-EXTREME』とScythe標準グリスの結果も10%程度だった事を考えると、温度自体が高くなっているため差が目立つようになっただけとも言えそうです。

グラフ2




◆ まとめ 〜 グリスの性能差が活きる温度で使うか否か 〜

 前回の検証結果と今回の検証結果から、温度が高くなればグリスの性能が温度に与える影響は大きくなるようなので、空冷の限界に挑むようなオーバークロックを行うような場合にはハイエンドグリスを購入する価値はありそうですね。

 反対に、常用を見据えるのであれば、ハイエンドグリスの性能がハッキリと確認出来るような温度で使う気になるか否かがグリス選びのポイントになるのではないでしょうか。メーカーの製品情報や今回のようにグリスの性能差をレビューするような場合には、出来るだけ高い温度にすれば良い訳なんですが…。

 結局のところ、空冷レベルならCPU温度が低い事は良い事なんですが、安定して動作する範囲であれば数℃の差など大して気にする必要も無い訳なので、常用を見据えた構成で本当にグリスの恩恵があるのかという点については、よく考えた方が良いのではないかと思われます。…まぁ、"必要十分な性能"という事を重要視し過ぎると、グリスもCPUクーラーだけでなく、自作PCそのものが面白くなくなってしまうんですけどね。(^_^;)

 個人的には選んでおけば特に問題ないという理由で、『Thermal Elixer』や『GC-EXTREME』あたりがお勧めですが、『KP92』のような製品もあるという事を意識した上で、使用する目的やパーツ構成に見合った製品を選んで頂ければと思います。









トラックバックURL

トラックバック一覧

1. サーマルグリス 13種類の性能検証  [ PINUPS - 上田新聞 blog版 ]   2009年10月21日 01:12
・ サーマルグリス性能比較 其の弐 〓 高発熱環境での検証 〓 BlogなMat...
2. サーマルグリス性能比較 〜 高発熱環境での検証 〜  [ 透明人間◆PCブログ ]   2009年10月21日 09:42
 マザーボードを交換する際に、CPUやCPUクーラーも移設する訳ですが、そのCPUにCPUクーラーを付けるときに使うグリスというものがあります。こギ..

コメント一覧

1. Posted by tdam   2009年10月20日 17:06
5 いつもながら詳細なベンチマークご苦労様です。

記事を拝見して一番驚いたのが、かなり発熱が高そうな環境にもかかわらず、意外に各製品ごとに差がないことですね…。それだけ塗り方が上手だということでもありますが、意外でした。

あと、熱伝導率で言ったら一番上のはずのKP92がダントツの最下位という結果にも驚きました。スペックにだまされないようにしないといけませんね。そういう地雷を回避する意味でも価値ある検証です。
2. Posted by 雪華綺晶   2009年10月20日 19:51
5 始めまして、いつも拝見しております。m(_ _)m

詳しいレポートお疲れ様です。KP92は僕も以前試した事があるのですが、瀬文茶さんの結果通り?あまり冷えませんでした。
結果が瀬文茶さんと同じでちょっとホッとしている自分がいたり(^^;
3. Posted by nyaa   2009年10月20日 21:59
超絶乙です
Thermaltakeの付属品、案外冷えるんですね。
GC1が異常に扱いづらいので、これからはそっちを使おうと思います。
4. Posted by neo   2009年10月21日 12:20
5 初めまして。
検証お疲れ様です。
普段は入手性と性能のバランスからAS-05を使用しているのですが、Thermal Elixerの性能には驚きました。
私も使ってみようと思います。
5. Posted by 通りすがり   2009年10月22日 12:50
検証お疲れ様です。大変参考になります。

>温度が高くなればグリスの性能が温度に与える影響は大きくなる

温度で変質しないなら発熱と温度差 (この場合ケースとクーラー) は比例します。

グリスの熱伝導率というのはそういう意味です。

クーラーも似たようなものなので、クーラーを変えることを考えればグリスはコストパフォーマンスがいいのではないでしょうか。

6. Posted by root   2009年10月22日 23:49
5 初めましていつも参考にさせてもらってます。
検証お疲れ様です。断トツでKP92冷えないですね。自分はKP92の熱伝導率と成分の"企業秘密"というとこに引かれて買ったのですがかなり残念な買い物になりました。まだ結構残っているのですが、瀬文茶さんは冷えないKP92などのグリスはどうしてますか?
7. Posted by 774   2009年10月23日 02:31
これだけたくさんの検証、お疲れ様です
細かいことは気にせず頑張ってください!
いつも参考にしてるので非常にありがたいです
8. Posted by とおり   2009年10月23日 23:22
熱伝導率で云々するなら、LIQUID MetalPadを試してみてはどうですか?
9. Posted by 瀬文茶   2009年10月26日 03:15
>tdam さん
KP92は困った製品ですね…。
使用する温度によっては差が詰まる事もあるのでしょうが、
こんな結果では地雷と言われても仕方ない気がします。


>>雪華綺晶 さん
はじめまして。
KP92は流石に検証ミスじゃないかと不安になるスコアですよねぇ。
私も最後に検証したのがKP92だったので、他のグリスから一つだけ
突出した結果に驚いて、取り外してから再検証してしまいました。
結局おなじ結果だったので二度手間でした…。(汗

あ、そうそう、グリスの検証お疲れさまでした〜。
http://red.ap.teacup.com/kirakishow/76.html


>>nyaa さん
今回はThermaltakeの他に、Prolimatechとサイズの付属品を比較対象
に加えていますが、いずれもそこまで悪くないですね。

これなら、付属品が残っているうちは無理に単体販売されているグリス
を買わなくても良いと感じる方も少なくないのではないでしょうか。


>>neo さん
AS-05は、2003年11月末発売と、今回比較した製品の中でも最古参
の製品の一つであり、評判が高いロングセラー品ですから取り扱い店舗
も多く、価格は高いですが入手性は良いですね。

今回はThermal Elixerがごく僅かな差でトップに立っていますが、
約6年も前の製品であるAS-05が最新製品と3℃差というのも十分
凄いのかもしれません。
10. Posted by 瀬文茶   2009年10月26日 03:16
>>通りすがり さん
今回の検証のポイントと思っているのは、以下の三点です。
・PCで使用する上で現実的な温度でグリスによる差が生じること
・メーカーの謳う熱伝導率と検証結果が食い違っていること
・使用環境(温度・クーラーなど)により温度差が変化すること

問題なのは、熱伝導率を含めたグリスの"性能"によって差がつく
にも関わらず、メーカーがスペックとして提示する"熱伝導率"
が"性能"の指標となり得ない点ですね。

クーラーとグリスのどちらを換えた方がコストパフォーマンス的に
有利かという点に関しては、ケースバイケースと言った所でしょうか。

例えば、TRue Black 120からMegahalemsに乗せ換える事で得られる
恩恵は極めて小さく、場合によってはグリスの方がコストのみならず、
温度面でもクーラー交換の効果を上回る事も考えられます。
一方、リテールクーラーからMegahalemsに乗せ換えるような場合、
騒音面・温度面でグリスでは改善不可能な効果を得られると思います。

交換前に使っているグリスとクーラー次第ですね。


>>root さん
「あまりに素晴らしい性能なので、他社に真似されないようその秘密は
明かせません」的なイメージを与える謳い文句ではありますよね。
でも、この結果だと、「テキトーな製品だから配合内容なんて明かせない」
というような気がしてきます。何が配合されているのやら…。

冷えないグリスをどうするのか、ですか…。うーん、どうもせずただ
持っているだけだと思います。
11. Posted by 瀬文茶   2009年10月26日 03:17
>>774 さん
ありがとうございます。
そう言って頂けると記事にしている意味はあるのかなーと感じます。
気になる点やおかしな点があれば指摘して頂けると助かるのですけれど、
余所で呟かれるだけではなかなか…。

と、言う訳で具体的なご指摘やご質問は歓迎しておりますよー。
お気軽にコメント頂き、より参考になる記事にして頂ければ幸いです。


>>とおり さん
うーん…。Liquid MetalPadやLiquid Proに興味はあるんですが、
値段と除去する事を考えると、二の足を踏みますね…。
しかし、まぁ熱伝導率のスペックだと断トツの製品ですから、
レビューしない訳にはいかない…かな。
12. Posted by 通行人A   2009年10月27日 03:17
5 お疲れ様でした、いつも綺麗な記事で参考になります。

ちなみにCPUダイとヒートスプレッダの熱結合ですが、
ローエンドCPUはグリス、ハイエンドCPUは半田付けだそうです。
Liquid Proの性能を見てもやはり金属同士の結合がベストで、
それに比べたらグリスの多少の性能差なんて誤差レベルって感じがしますね。
13. Posted by 瀬文茶   2009年10月27日 15:10
>>通行人A さん
熱伝導率は圧倒的に上なので、確かに金属で接合する
Liquid Proなどはグリスとは一線を画すのかも知れませんね。

ただ、CPUやGPUが許容できる温度域で、その熱伝導率の差が
どれほど温度に影響を与えられるのか、というのがポイントかと思います。

結構価格差もあるので、"PCで使う"という条件下では、
熱伝導率的にはベストな金属による接合が、必ずしもベストな選択肢とは
言えないのかもしれません。

その辺を見られるように検証すれば良いんですよねー。
やっぱり買うしかないのかなぁ。
14. Posted by 通行中B   2009年10月27日 21:59
5 初めまして。検証、大変参考になりました。そしてお疲れ様です。

「嘘スペック」グリスが多いのは昔からですが、さらに困るのは胡散臭くても使ってみたら実は性能がよかったって製品があるからなんですよね・・・他にも実はブランド違いなだけで中身が同一だったり、塗り方が悪いと性能を発揮できなかったりとグリス選びはいつも難しいですね

LiquidPro、LiquidMetalPadですが前者はアルミを侵食するので使えるクーラー・状況が限定されてしまうのと除去が大変なのが難点ですよね。後者はアルミでも使えるものの一度高温(60℃以上でしたっけ?)にして馴染ませないと駄目なのがこれまた難しい(面倒)。手間やメンテのしやすさを考え、自分はLiquidよりも性能が多少落ちても普通のシリコングリスを選んじゃいます
15. Posted by ねむねむ☆   2009年11月01日 12:07
5 前回に引き続き、とても参考になりました。
おつかれさまでした。
16. Posted by momoto   2009年11月23日 11:58
 初めましていつも参考にさせてもらってます。
検証結果を参考にMegahalemsとThermal Elixerを購入してきました。
期待以上の結果で喜んでいます。

これからも大変でしょうが、検証を楽しみにしていますので
頑張ってUPしてくださいね。
 
17. Posted by 瀬文茶   2009年11月24日 00:51
>>通行中B さん
はじめまして。物凄く遅いレスですみません。(汗
最近のグリスも非金属系のものは、見た目的にかなり似ている
ような気がします。まったく同一という訳で無くても、
グリスの成分が大体同じという製品は結構多いのかもしれませんね。

Liquid系に関しては、取りあえずLiquid Metal Padを買ってみました。
価格とデメリットを考えれば、サーマルグリスより高い性能を見せて
くれないと困るのですが、はたしてどうなのでしょうねぇ〜。


>>momoto さん
はじめまして。
検証記事をご覧いただきありがとうございます。
満足できる結果が得られたようで何よりです。

今後もボチボチ検証記事を書いていくつもりですので、
今後ともよろしくお願いします。

コメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価:  顔   星
 
 
 
記事検索
記事カテゴリ一覧
アーカイブ
Google翻訳

翻訳内容の正確性は保証しません
トラックバック
[SSD]SSD新製品まとめ(2008Q4) (博士課程大学院生の現実逃避日記)
SSDとHDDのRAID 0構成の比較検証
プロフィール
瀬文茶
 HNは瀬文茶(せぶんちゃ)と申します。

 PC関連のイベントがあってもなくても秋葉原に出没して、ネタを探したり無駄遣いをしたりしています。
このブログについて
─ リンクについて ─

 当ブログはリンクフリー、コメントフリー、トラックバックフリーです。

* ただし、まったく関連性のない記事からのトラックバックなど、当方が不適切と判断した場合は、削除する事があります。



─ 記事の引用について ─

 当ブログに掲載された記事の中から文章を引用する場合は、該当記事へのリンクと引用した文章である事が判るように表記して頂ければご自由に行って頂いてかまいません。

ただし、記事中の画像や記事全文の転載は基本的に禁止です。



─ メールアドレス ─

アドレス

 宛先に上の画像に記載されているアドレスを入力頂くか、画像をクリックして下さい。







Site Access


Page View


Online
  • livedoor Readerに登録
  • RSS
  • livedoor Blog(ブログ)