ペルチェ素子や10本のヒートパイプを採用したCooler Masterの超大型ハイエンドCPUクーラー『V10』の外観レビュー&冷却性能検証です。

 かつて4gamer.netの取材に対しCooler Masterが"世界一の冷却性能を目指す"と宣言して作り上げたCPUクーラーは、実売価格 約18,000円という価格に見合う製品に仕上がっているのでしょうか?

Cooler Master『V10』


◆ 外観写真集 〜 オロチを凌ぐ超大型CPUクーラー 〜

 Cooler Masterの『V10』は、自動車のエンジンをイメージしたデザインと8本のヒートパイプが売りのハイエンドCPUクーラー『V8』の上位モデルに当たる製品で、10本のヒートパイプとペルチェ素子の組み合わせによりTDP 200W以上対応を謳うCooler Masterの空冷CPUクーラー最上位モデルとなっています。

斜め上-1-

斜め上-2-

上面

ベース面


 『V10』には10本のヒートパイプが搭載されていますが、10本のうちベース面に接続されているのは6本のみで、残りの4本はペルチェ素子の放熱面に取り付けられています。また、『V10』のペルチェ素子はベース部と一体になっておらず、ベース部を貫通している4本のヒートパイプを介してベース部に接続されています。これまでのペルチェ素子採用製品は、ペルチェ素子とベース面が一体になっている印象がありましたが、ヒートパイプで接続したのには何か理由があるのでしょうか?

底面から

ベース面とペルチェ素子


 これまでの写真でもお察しいただけるかと思いますが、『V10』は非常に大型のCPUクーラーで、スペック上では236.5(L) x 129.6(W) x 161.3(H) mm、重量1,200gとなっています。これはサイズから発売されている超大型CPUクーラー『OROCHI(大蛇)』よりも大きく、スペックも価格もサイズも超弩級のCPUクーラーと言えますね。

取り付け時

オロチとのサイズ比較

TRue Black 120とのサイズ比較


 『V10』のヒートシンクは、ケースファンをサンドする形でそびえ立つ2ブロックのサイドフロー型放熱フィンと、ベース部と4本のヒートパイプで接続されたトップフロー型放熱フィンの計3ブロックで構成されています。トップフロー型放熱フィンを備えた事で周辺冷却性能を向上させつつ、発熱の大きいペルチェ素子の冷却用には暖まった空気を停滞させにくいサイドフロー型放熱フィンを割り当てる事で、CPUと周辺機器の両方を強力に冷却する仕様となっています。

カバー取り外し

カバー取り外し時

カバー取り外し時(横)


 『V10』には標準で2基の120mm角25mm厚ファンが搭載されています。標準で搭載されている冷却ファンは、回転数を800rpm〜2400rpmまでPWM制御で変更可能となっており、最高速なら90CFMの大風量、最低速なら17.0dBAの静音性を実現しています。今回の記事ではレギュレーションに準拠するため、他のCPUクーラーとの性能比較時には冷却ファンの交換を行っていますが、実際に使用する場合には標準で搭載されている冷却ファンを交換する必要は特に無いように感じました。

なお、冷却ファンの交換は本体カバーを外せば行えますが、38mm厚の120mm角ファンは取り付ける事が出来ませんでした。本体の形状を保ったまま冷却ファンを交換するのであれば、25mm厚の120mm角ファンの中から交換用のファンを選択する事になります。

付属ファン

LED点灯時




◆ CPU冷却性能比較 〜 TDP 200W+を謳うCPUクーラーの実力は? 〜

 "TDP 200W以上の発熱にも対応可能"と謳う程、Cooler MasterがCPUクーラーの冷却能力に自信を持っている『V10』の性能は如何程のものなのでしょうか?「サイドフロー型CPUクーラー5製品 冷却性能比較」の中から4製品の検証結果を抜き出して『V10』と比較してみました。

 なお、今回の検証環境・検証条件は「【LGA 775】CPUクーラー冷却性能比較 Regulation 1.xx」に準拠しています。

CPU

 結果はご覧の通りで、TDP 200W以上に対応する『V10』が圧倒的な冷却性能を見せつけるかと思いきや、どのファンとの組み合わせでも冷却性能トップは獲得できておらず、『KAZE-JYUNI 1900rpm』搭載時にはトップの『Megahalems (ファン×2)』に6℃差をつけられ、比較した5製品中最下位となっています。10本のヒートパイプに3ブロックの大型放熱フィン、さらにペルチェ素子まで備える『V10』ですので、正直なところ"もう少し冷えても良いのでは?"と思ってしまうような比較結果となっています。

 ただし、『V10』に搭載されているペルチェ素子は、"CPUを可能な限り冷却する"為に取り付けられているのではなく、"CPU温度を常に最適な状態に保つ"ことを目的にしているという事に注意する必要があります。『V10』のペルチェ素子は、常に全力で吸熱を行っている訳ではなく、内蔵センサによって検出したCPU温度を元に印加電圧を調整して吸熱量を制御したり、過度な吸熱による結露の防止する為の制御などを行っています。

 では、実際『V10』のCPU冷却にペルチェ素子の吸熱はどれほど役立っているのでしょうか?先ほどの検証結果(+標準ファン搭載時)のCPU温度と、ペルチェ素子への電力供給を行わなかった場合のCPU温度を比較してみました。

ペルチェOn・Off

 ペルチェ素子の有無で驚く程大きな温度差がついた訳ではありませんが、風量の少ない低速〜中速ファン搭載時はペルチェ素子の有無である程度の差が付いています。Cooler Masterが言うところの"最適なCPU温度"が何℃なのかは分かりませんが、今回の検証結果をみると60℃前後に抑えようとしているようには感じます。

 Cooler Masterが『V10』を"CPUを極限まで冷却するCPUクーラー"と謳ってくれたなら『Megahalems』や『TRue Black 120』に後れを取っているのはガッカリと思ってしまうところですが、"最適なCPU温度に保つ"と言われてしまうと評価が難しくなりますね。とりあえず、「【LGA 775】CPUクーラー冷却性能比較 Regulation 1.xx」で規定しているCPU発熱量程度では『V10』の限界が見えていないように感じるので、他のハイエンドクーラーも含め、更に厳しい条件での冷却性能検証を行いたいと考えています。




◆ 周辺冷却性能比較 〜 トップ+サイドフロー型の真価を発揮 〜

 トップフロー型とサイドフロー型をミックスした形状が特徴的な『V10』は、今回比較しているサイドフロー型CPUクーラーよりも高い周辺冷却性能を有している事が期待されますが、実際にどの程度温度差がつくのでしょうか?「【LGA 775】CPUクーラー冷却性能比較 Regulation 1.xx」に基づいて検証を行ってみました。

チップセット

メモリSlot1

メモリSlot3

 風量が少なく風圧の弱い『S-FLEX 800rpm』搭載時の結果こそサイドフロー型と大差ない温度になっているものの、それ以外のファンとの組み合わせでは、チップセット・メモリ共にサイドフロー型CPUクーラーをまったく寄せ付けない冷却性能を見せつけています。一般的なレイアウトのマザーボードだとメモリスロット上空に位置する事になるトップフロー型放熱フィンの効果が顕著に現れた結果と言えますね。

 最近のマザーボードはチップセットや電源回路に大型のヒートシンクを取り付け、CPUクーラーからのエアフローによって冷却するという事を意識した仕様の製品が多い事を考えると、CPUだけでなく周辺機器をキッチリ冷却する事が出来るというのは魅力的なポイントと言えるかと思います。今後はどこかの機会で今回の比較製品の中に存在しないトップフロー型CPUクーラーとの比較も行いたいと思います。




◆ 消費電力検証 〜 ペルチェ素子冷却の代償 〜

 ペルチェ効果(2枚の金属板の接合部に電流を流すと金属板間で熱が移動する)を利用した半導体素子のペルチェ素子を冷却機構に利用する場合、吸熱量を上回るペルチェ素子自体の発熱を如何にして処理するのかという点と、ペルチェ素子を稼動させる為に必要な電力が問題になります。

 ペルチェ素子自体の発熱に関しては、『V10』ではペルチェ素子の放熱面に4本のヒートパイプで大型放熱フィンを接続する事でこの問題に対処していますが、消費電力はペルチェ素子を利用する上で避けられない問題です。実際『V10』のペルチェ素子を利用して冷却をおこなうとどれだけ消費電力が増大するのか測定してみました。

消費電力

 検証時に取り付けていファンは標準ファン(フル回転)のなので、アイドル時/ロード時ともにCPU温度の検証ではペルチェ冷却の有無で殆ど温度差がつかなかった環境です。このような条件下であってもペルチェ冷却を行った際の消費電力は44〜46Wも高くなっています。Cooler Masterのウェブサイトに掲載されているスペックによると、『V10』のペルチェ素子および制御回路が消費する電力は最大で70Wとされているので、よりCPU温度が高くなりペルチェ素子の吸熱量を上げる必要が出た場合は更に消費電力が上昇すると考えられます。

 『V10』の導入を検討される方はこの程度の消費電力を気にされないかと思いますが、冷却ファンの消費電力のみで運用出来る一般的な空冷CPUクーラーと比較すると、ペルチェ素子を冷却に利用する『V10』の電力効率が悪いという事は意識しておいた方が良いかと思います。




◆ まとめ 〜 トータル性能の高さが魅力 〜

 「【LGA 775】CPUクーラー冷却性能比較 Regulation 1.xx」に準拠した今回の検証では、『V10』が持つ本来の冷却能力を引き出し切れていないように感じましたが、少なくとも空冷OCの限界を探るような用途に向けて設計されたCPUクーラーでない事は確認できたかと思います。むしろ、"CPU温度を最適に保つ"というペルチェ素子の制御方法や、強力な周辺冷却性能を持っている『V10』は、常用PCで長期間OC動作を行うような場合に力を発揮してくれそうです。

 価格やサイズ、電力効率などの面から万人にお勧め出来る製品でない事は明らかですが、どんな人にお勧め出来る製品かと言われると……そうですねぇ…、『V10』の外観はカッコいいですし、CPUと周辺冷却共にハイレベルな冷却性能を持ったCPUクーラーですので、側面にクリアパネルを採用しているPCケースを利用したハイエンドゲームPCなどに取り付けると見た目的にも性能的にも満足出来そうな気がします。満足感を得る為の製品という点では、本当に自作PC用パーツらしいCPUクーラーと言えますね。




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