「AMD 780Gチップセット」搭載マザーボードとAMD-ATI製ローエンドGPU搭載ビデオカードを組み合わせることで、3D描画性能を向上を図る新技術「Hybrid Graphics」の効果を検証してみました。


GA-MA78GM-S2H 本体  Radeon HD 3450


検証環境

 今回「Hybrid Graphics」の検証に利用したのは、GIGABYTE製の「AMD 780G」搭載マザー『GA-MA78GM-S2H』と、GECUBE製の「Radeon HD 3450」搭載ビデオカード『GC-HD345PLS2-E3』を利用しました。その他の構成に関しては以下に掲載した通りです。

検証環境


 なお、今回は「Hybrid Graphics」環境への比較対照として、「Radeon HD 2600 XT (GDDR3・OC)」を搭載したHIS製ビデオカード『H260XTQT256DDN-R』を搭載した際のデータも測定しています。

『H260XTQT256DDN-R』は1万円以下で購入可能になった「Radeon HD 2600 XT (GDDR4)」に近い性能を持った製品ですので、「Hybrid Graphics」用に「Radeon HD 3450」搭載ビデオカードを買い足すか、ミドルレンジ製品を購入するか検討している方にはある程度参考になるかと思います。



『GA-MA78GM-S2H』でのHybrid Graphicsの有効化

 「Hybrid Graphics」を有効にする為には、ディスプレイケーブルをビデオカード側に接続した状態でWindows Vistaを起動し、「CATALYST CONTROL CENTER」上で"CrossFire"を有効にする必要があるわけですが、今回利用した『GA-MA78GM-S2H』+「HD 3450」環境では起動しても「CATALYST CONTROL CENTER」上に"CrossFire"の設定項目が現れませんでした。

これはビデオカードを接続した時点でAMD 780Gの内蔵グラフィックス機能である「Radeon HD 3200」が無効にされていた為で、これを有効にするためにはBIOS上の設定項目である[Init Display First]を[PEG]にした上で[Surround View]を[Enabled]に設定する必要がありました。


BIOS



 「AMD 780G」+「Radeon HD 3450/3470」を組み合わせたのに「CATALYST CONTROL CENTER」上に"CrossFire"の項目が出ない場合は、BIOSの設定を確認してみるといいかもしれませんね。



パフォーマンス比較

 今回の検証では、「3DMark06」「3DMark2001SE」「LOST PLAMET」「FINAL FANTASY XI Official Benchmark Program 3」の計4つのベンチマークソフトを使って、「AMD 780G」+「HD 3450」の組み合わせによるHybrid Graphicsの効果を確認してみました。


3DMark06

3DMark2001SE

LOST PLANET

FINAL FANTASY XI



 今回行ったベンチマークテストのうち、Hybrid Graphics時にパフォーマンスの上昇が確認されたのは「3DMark06」と「LOST PLANET (Snow)」で、特に『Phenom 9500』搭載時の「3DMark06」のスコアは、「AMD 780G」単体時と比較して約78%、「HD 3450」単体時と比較しても約57%のスコア向上が確認出来ます。

ただし、Hybrid Graphicsの効果が確認出来ないテストや逆に「HD 3450」単体時よりもパフォーマンスが低下したテストも複数確認されており、必ずしもHybrid Graphicsがプラスの方向に働くとは限らないといえます。

 また、「AMD 780G」+「HD 3450」の組み合わせによるHybrid Graphicsでは、「Radeon HD 2600 XT (GDDR3・OC)」との間に大きなパフォーマンス差があり、パフォーマンスを重視するならマザーボードに6000〜7000円前後の追加投資でHybrid Graphicsを構築するよりも、1万円前後で購入可能な「Radeon HD 2600 XT」や「Radeon HD 3650」を購入した方が良さそうです。



システム全体の消費電力

 パフォーマンス比較に続いてシステム全体の消費電力を比較してみました。この検証ではアイドル時の消費電力に加え、Stress Prime 2004を使って負荷をかけたCPUコア数ごとの消費電力と、3DMark06のTEST2実行中の最大消費電力を比較しています。


システム全体の消費電力比較



 結果は上に掲載したグラフの通りで、Hybrid Graphics時の消費電力はパフォーマンス面で大差をつけられていた「Radeon HD 2600 XT」より全ての項目で低くなっています。

 もっとも、注目すべき点はそこではなく、3DMark06実行時にHybrid Graphics構成の消費電力が「HD 3450」単体時よりも低くなっている点です。同様の現象は4Gamer.netの検証でも確認されており、4Gamer.netではCPUの使用量が減った為ではないかとしています。(⇒4Gamer.net)

ただ、個人的にはCPUの使用量が減ったのではなく、消費電力の低い内蔵グラフィックスと単体ビデオカードの組み合わせによるCrossFire構成だから発生する現象なのではないかと思います。その理由は…

 ・CrossFireではパフォーマンスの低いGPU×2のパフォーマンスに近くなる
  ⇒AMD 780Gに足を引っ張られ、HD 3450はフルに能力を発揮できない

 ・CrossFire動作時は両方のGPUが常にフルに動作する訳ではない
  ⇒単体時に比べ、GPU1個当たりの使用率は低下する

 ・AMD 780Gは「HD 3450」よりも低消費電力

という3つの前提から、『フルロードで動作していない「HD 3450」は単体動作時よりも消費電力が低下している』と予想されます。このフルロードではない状態の「HD 3450」に低消費電力な「AMD 780G」を組み合わせたため、合計の消費電力がフルロード動作時の「HD 3450」より低くなったのではないか?という訳です。

 いずれにせよ、3DMark06に限って言えば、Hybrid Graphicsを構成する事でパフォーマンスが向上しつつ消費電力は低下するという面白い現象が発生するのは確かなようですね。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 対応アプリケーションでのパフォーマンス向上や3DMark06実行時の消費電力低下など、なかなか面白い効果も確認できたHybrid Graphicsですが、それほど差のない投資でミドルレンジGPU搭載製品が購入できる現状を考えると、パフォーマンス向上の手段としてHybrid Graphicsを導入するのはやはりお勧めしがたい感じがします。

パフォーマンス比較をご覧いただければお分かり頂けるように、Phenomとの組み合わせで本来のパフォーマンスを発揮した際の「AMD 780G」は「Radeon HD 3450」に匹敵するだけの性能をはじめから持っているので、これ以上の性能を必要とするならミドルレンジGPU搭載製品を購入した方が安定してパフォーマンス向上が得られるはずです。

 同じHybridを冠する技術でも、NVIDIAのHybrid SLIは重要な消費電力削減技術としての役割を担っていますが、今回の検証でAMD-ATIのHybrid Graphics機能はあくまでもオマケ要素なのかなという印象を受けました。




最安値情報 …coneco.netより
AMD 780G搭載マザーボード
Radeon HD 3450搭載ビデオカード
Radeon HD 3470搭載ビデオカード
Radeon HD 3650搭載ビデオカード
Radeon HD 2600 XT搭載ビデオカード